2019 Fiscal Year Research-status Report
ドープされたモット絶縁体における擬ギャップ現象の研究
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19K23433
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関 和弘 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (40708533)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 有限温度物性 / block拡張有限温度Lanczos法 / 強相関電子系 / リング交換相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では強相関電子系であるドープされたMott絶縁体の有限温度物性を計算物理学的手法により研究する。研究手法としては変分クラスター近似法を用いる。研究計画提出当初は研究代表者らが以前に提案したblock Lanczos法を用いた変分クラスター近似法を用いてすぐに計算を開始する予定であったが、当初予定していた計算をより効率的に行うために、本研究では、block Lanczos法と確率的サンプリングを合わせて有限温度物性を計算する方法(有限温度Lanczos法の一種の拡張)を提案した。この方法は通常のLanczos法を用いる場合と比べて、使用するメモリは大きくなるものの、行列ベクトル積を高速化できるという利点がある。 この方法を三角格子上で定義されたリング交換相互作用を含むHeisenberg模型に適用した。この模型は、Mott絶縁体ではあるが金属絶縁体転移近傍の電子間相互作用パラメタにある三角格子Hubbard模型の有効模型であるが、Hubbard模型に現れる電子の占有数の自由度を凍結することでHubbard模型よりも大きなシステムサイズを扱えることが特徴である。ただし大きなシステムを扱う代償として、通常のHeisenberg模型で考えられている2つスピン間の相互作用に加えて、4つのスピン間の相互作用を考慮する必要がある。この模型の解析がその物性の解明に役立てられると考えられる物質としては、本研究で対象としている有機Mott絶縁体のほか、2次元的な物質の遷移金属ダイカルコゲナイドの一つ1T-TaS2があげられる。解析の結果、比熱の温度依存性に2つのピークが現れることがわかった。さらなる詳細を論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りではないが、有限温度物性を研究するのに有用な手法である有限温度Lanczos法をblock Lanczos法に拡張することによる効率化ができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに開発した計算プログラムを用いて当初の目的の計算を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、年度末に参加を予定していた国際会議と国内学会の中止により、当初予定した旅費を使用しなかったため次年度使用額が生じた。次年度も学会等が中止またはオンライン開催されると予想されるので、旅費を減らし、在宅勤務または勤務による本研究計画の遂行を効率化するための物品費に研究費を使う予定である。
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