2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of an active magnetic field compensation system for experimental searches of physics beyond the Standard Model
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19K23442
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋口 嵩 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (90843772)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 磁場安定化 / 磁場測定 / 素粒子物理学 / 超冷中性子 / 電気双極子モーメント / 加速器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、TRIUMF研究所における中性子電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment, EDM)探索実験のための多次元フィードバックによる動的磁場安定化システムの開発を目指している。目標とする精度における中性子EDM測定には極めて高い磁場の安定度が要求されるが、これを加速器施設内において実現するためには、施設内の背景静磁場や変動磁場を打ち消す補償システムが必要となる。例えば、中性子EDM装置が設置される予定の施設では、サイクロトロンの漏れ磁場による 100 uT オーダーの背景静磁場が存在するうえ、施設内の他の実験の活動や輸送用の天井クレーンの動作による磁場変動が発生する。強い静磁場は外部磁場を遮蔽するための磁気シールドを飽和させる恐れがあるため、補償システムが作り出す磁場によって打ち消す必要がある。またシールドの外側での外部磁場変動はEDM測定中は100 nT 程度までに抑える必要がある。本研究では、中性子EDM実験を行う予定の施設内に存在する環境磁場に即した補償システムを設計し、そのプロトタイプを制作することを目指している。 2019年度は、装置が設置される予定のTRIUMFの施設において、背景静磁場の空間分布の詳細な測定を行った。また、数か月間にわたる磁場のモニタリングと、輸送用天井クレーンを使用した測定とにより、施設内に発生する典型的な磁場変動の時間・空間的特徴を得た。これらの測定により取得したデータをもとに、現在補償システムの設計を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、中性子EDM実験が行われる予定のTRIUMFの加速器施設内での磁場補償システムの開発を目指している。当施設の環境に特化したシステムを開発するために、初年度は、施設内で磁場の測定を行い、環境磁場の特徴づけを行うことを第一の目標としていた。 昨年度行った磁場測定により、施設内の背景静磁場、磁場変動それぞれについて、磁場補償システム設計のために十分なデータが取得できた。磁場補償システムのプロトタイプ製作に向けて,ハードウェア面で開発すべき要素が残っているものの、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、昨年度の測定によって取得したデータを基に、静磁場、変動磁場のそれぞれについて、それらを打ち消すのに適切なコイルの形状を設計するための有限要素法によるシミュレーションを進めている。 コイルの形状、必要な電流源の要求が具体化したのち、電源系統、磁束計の読み出し回路等のハードウェアの開発、プロトタイプ製作へと進んでいきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で当初購入を予定していた物品の納期が遅れる見込みだったため。
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Research Products
(4 results)