2019 Fiscal Year Research-status Report
大質量星の重力崩壊に伴う磁気流体ジェットの加速メカニズム
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19K23443
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松本 仁 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (70722247)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 相対論的ジェット / Rayleigh-Taylor不安定性 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大質量星の重力崩壊時に出現するジェットの加速メカニズムを大規模な三次元数値流体シミュレーションを用いて解明することである。ジェットを効率良く加速するためには、ジェット伝搬中の安定的な構造が必要不可欠である。ジェット形状が崩れジェット外媒質との混合が生じれば、ジェットの慣性が増加するため減速する。本年度は、三次元相対論的流体シミュレーションを駆使し、ジェット伝搬中にジェット境界で成長するRayleigh-Taylor不安定性がジェット構造に与える影響を調べる研究を行った。この不安定性は非軸対称モードであるため、従来の二次元軸対称シミュレーションではその成長が確認されてこなかった。そこで、物理的状況および数値シミュレーションの解像度を同じに設定した三次元計算と二次元計算を行い、その比較を行うことで、三次元計算にだけRayleigh-Taylor不安定性が成長しジェット境界が崩れることを明らかにした。本研究成果はジェット伝搬中のダイナミクスを議論する際には、三次元性が本質的で必要不可欠であることを示した重要な結果である。また、磁場が含まれない場合にはジェットが駆動される物理的状況によらず、相対論的ジェットの伝搬中にはRayleigh-Taylor不安定性が成長する条件が常に満たされることを解析的に導出し、数値シミュレーションのパラメータサーベイを行うことで確認した。これらの成果は、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society誌にて出版済み(Matsumoto & Masada 2019)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、予期していた通り何かしらの抑制する効果が働かなければ、ジェットは伝搬中にRayleigh-Taylor不安定性が成長しジェット構造が崩れることがわかった。これにより研究プロセスとしては、安定的なジェットの加速を実現するためジェット境界で成長する不安定性を抑制する機構を解明する次のフェーズへと移行した。本研究課題申請当時より、不安定性の成長を抑える効果として磁場やジェットが伝搬する媒質の密度・圧力構造に注目している。次年度は計画通りこれらの果たす役割について解明する研究を遂行する予定でおり、研究計画自体は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
磁場が存在する場合には、磁気張力によりRayleigh-Taylor不安定性やジェット境界での流体の速度差に起因したKelvin-Helmholtz不安定性の成長は抑えられる可能性がある一方で、ジェット中の電流勾配に起因したKink不安定性が成長する可能性がある。ジェットが伝搬する媒質の密度や圧力をパラメータにし変化させることで不安定性の成長、ジェットへのジェット外媒質の混入具合、およびジェットの加速に与える影響を調べる研究を行う。また並行して、大質量星の重力崩壊時に形成されるプロトマグネター(強磁場原始中性子星)により駆動される磁気流体ジェットの駆動メカニズムを大質量星コアの重力収縮から計算を始め、初期磁場強度・磁場配位を変化させることで調査する。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた年度末の学会・研究会がコロナウイルスの爆発的な感染拡大により開催が中止となったためその分の旅費が未使用となり次年度使用額が生じた。本研究計画では、大規模な数値シミュレーションを行う。データ保存用にストレージを購入予定であるが、次年度使用額分を使って当初の計画よりストレージを拡充する予定である。
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