2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of ocean simulation with focus on the Totten Ice Shelf
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19K23447
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 佳洋 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30840201)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 南大洋 / 南極 / 棚氷 / 融解 / 海面上昇 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) Massachusetts Institute of Technology General Circulation Model(MITgcm) を用いて、トッテン氷河/棚氷域の海洋モデルを構築した。具体的には (a)地形データ、境界条件の作成、(b)低解像度シミュレーションの実施、(c)モデルと観測結果の比較評価、(d)モデル の高解像度化、(e)モデルと観測結果の比較評価といった作業を行なった。モデルの境界条件としてNASAジェット推進研究所で開発されている海氷海洋結合モデルを用いたデータ同化プロダクトを利用した。
2) モデルを解析した結果、周極深層水(Circumpolar Deep Water)と呼ばれる暖かい水塊の陸棚上へ流入が再現された。1992年から2016年の間の棚氷融解量の値やその変動は、人工衛星から得られる観測データと整合的であった。既存の極域の海洋モデルでは、時間的変動をよく表すことは難しく、大きな成果である。また、棚氷融解について研究が進んでいる西南極域の研究から、棚氷の融解は、高温の水塊の流入と沖合いの風応力に強く関係していることが示唆されてきた。しかし、トッテン氷河/棚氷域の海洋モデルから、高温の水塊の流入は沖合いを流れる南極沿岸流(Antarctic Slope Curent)との強い関係性があることが示唆された。この結果は、東南極のトッテン棚氷沖では、高温の水塊の流入が、西南極とは異なるプロセスでコントロールされていることを示唆する。
3) 現在、トッテン棚氷への高温の水塊の流入プロセスが、どのような条件で強化されるのかを確かめるための感度実験を実施している。特に、近年、観測されている、南大洋の昇温、南極沿岸域の低塩化がどのように陸棚上への高温の水塊の流入に影響を与えるかを調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で提案した通り、初年度にトッテン氷河/棚氷域の海洋モデルを構築することができた。現在数値モデルの計算は、1992年から2016年までを行なっている。観測データと比較した結果、外国の研究グループによって進められている数値モデル開発と比較しても、良い観測データとの整合性が実現された。現在は、この数値モデルを用いた感度実験を進めており、2020年度中にこれらの結果を論文にまとめることができる見通しとなっている。したがって本研究課題は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上述したように、実施している感度実験を終え、陸棚上への高温の水塊の流入メカニズムを明らかにする。さらに、数値実験結果と観測結果や、気候変動のビックデータ(結合モデル相互比較プロジェクト)などを利用しながら、将来的にどのようにトッテン棚氷への高温の水塊の流入が変化しうるか、またトッテン氷河が将来的にどの程度海面上昇に寄与しうるかを見積もる。2020年度中に上記の結果をまとめて、論文に投稿予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)大型計算機の予算を50万として計上していたが、30万でまかなうことができた。また、2月以降出張2件の予定があったが、開催中止、自己判断で取止めの判断をした。
(使用計画)論文投稿を2本として計画していたが、3本投稿できる見通しである。そのため、投稿に係る費用(投稿料、英文校閲など)として、繰越分を支出予定である。さらに、2月以降キャンセルとなった出張についても、本年度可能となれば実施する。
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Research Products
(4 results)