2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23454
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山上 晃央 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (30850135)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 北極大気 / 予測可能性 / アンサンブル予報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界各国の現業気象機関が日々行っているアンサンブル予報データを用いて、北極大気の予測可能性に影響をもたらす要因の解析を行い、北極大気の予測精度を向上させるために必要なプロセスについての手がかりを得ることを目的としている。 1年目の目標として、北極域での急激な予測精度の急低下事例について、中期アンサンブル予報(予報時間が3日から2週間まで)であるTIGGEデータを用いて解析を行なってきた。北極域での予測精度急低下事例については先行研究がないため、基準の選定を行わなければならなかった。当初は中緯度の基準をそのまま北極域へ適用する予定だったが、平均的に北極域は中緯度よりも予測精度が低いため、そのまま適用した場合は抽出される事例数が多くなった。これを回避するために、TIGGEデータが提供されている期間である2007年から2019年のデータを用いて6日予報の予測精度(アノマリー相関と根自乗平均誤差)を計算し、各季節での下位10%を予測精度急低下事例の基準とした。これによって、北極域に適合する予測精度急低下事例の基準を決定することができた。この基準を用いて、各年、各月の事例数の変動、事例発生時の大気大循環パターンの解析などを行なってきた。 また、延長アンサンブル予報(予報時間が2週間から2ヶ月)であるS2Sデータを用いた、北極域を含む北半球の週平均場の予測精度の解析も並行して行なった。北極域での予測精度は予報3週目で大きく低下する一方、北太平洋や北米大陸上などは3週目でも予測精度が高く、予測精度に地域差があることが示された。この予測精度の高い領域は北半球の支配的なテレコネクションパターンである北太平洋-北米パターンや北大西洋振動と密接に関係していることが示された。この結果については、国際学会でポスター発表および口頭発表を行なった。また、投稿論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析により、予測精度の急低下事例の基準の選定、事例発生時の大気大循環パターンなどが調べられた。これは研究実施計画の1年目に行う予定であった内容である。しかし、顕著現象と予測精度の急低下事例の関係については、今後も継続して解析を行なっていく必要がある。 一方で、研究実施計画で2年目に行う予定であった延長アンサンブル予報を用いた予測精度の解析を並行で行なってきた。この解析の結果で学会発表も行った。また、投稿論文としてまとめている。 これらのことから、全体の進捗状況としては概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
北極域における予測精度の急低下事例については今後も引き続き解析を行う。具体的には、季節ごとにおける急低下事例の発生要因の違い、予測精度急低下事例と北極低気圧などの顕著現象との関係、太平洋側および大西洋側の循環パターンの北極域の急低下事例への影響や、逆に北極域での急低下事例の中緯度の予測精度への影響などについての解析を進める。また、これらの解析の結果は学会発表を行うとともに投稿論文としてまとめる。 また、延長予報を用いた解析についても引き続き行なっていく。現在、これまでの結果について投稿論文としてまとめている。今後は、延長予報の時間スケールにおいて、海洋や海氷を予測するモデルと結合しているものとしていないものを比較し、その影響を解析する予定である。また、成層圏や中緯度の状態と北極域での予測精度の関係についても調査する予定である。これらについても、学会発表や投稿論文として発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた、アラスカ大学フェアバンクス校への出張および学会「One Health, One Future」がCOVID-19の影響によって中止となったこと、「Sixth International Symposium on Arctic Research」がオンライン開催となったために参加費および旅費が必要なくなったことにより、当該年度の助成金に余剰が発生した。 翌年度の使用計画として、物品購入については当初の予定通りに使用する。今年度の余剰の助成金については、主に研究成果の発表のために使用する。具体的には、国内及び国際学会への参加を当初の予定に加えて追加する、または論文投稿のための費用を増やすことで使用する予定である。
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