2019 Fiscal Year Research-status Report
黒潮とメキシコ湾流の海面水温同期メカニズムの解明および我が国の気象への影響調査
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19K23460
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
神山 翼 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (40845715)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 西岸境界流 / 偏西風ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
黒潮とメキシコ湾流は,熱帯から中緯度に熱を輸送しながら流れている。これらの暖流は,空間的に不均一な太陽放射を受ける気候系にとって,そのエネルギーバランスを保つ本質的な役割を担うと考えられている一方,北半球有数の大都市圏の沿岸を通りながら熱を大気に向かって放出し,異常気象や漁獲量変動を通して人間生活にも影響を与える。 これら2つの海流は,互いに北米大陸の反対側に位置し,海洋内部の過程のみでは数年規模の時間スケールで情報のやり取りをすることはない 。しかし研究代表者が両海流の続流域における領域平均海面水温の時系列を計算したところ,顕著な同期が検出された。さらにこれらの時系列を大気場に回帰すると,我が国の気象に密接に関係する「偏西風ジェットの南北移動」と密接に関係することが示唆される。 本計画では,この現象 を「境界流同期」と定義し,その物理的メカニズムと我が国の気象への影響を明らかにすることを目的としている。 初年度には,観測データの解析を中心に研究を進める計画であったが,その計画はおおむね達成された。具体的には,観測データや全球気候モデルから計算されたデータについて,クロススペクトル解析,ラグ相関解析,特異値分解解析等を用いることによって,境界流同期が起こっているという仮説がより確からしくなった。特に顕著な実績としては,気候モデルの解像度が細かい方が,境界流同期がはっきりと検出されることが判明したことである。これにより,境界流同期がただのノイズではなく,何らかの物理現象に立脚している可能性が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,観測データの解析を中心に研究を行うとしていたが,その予定が順調に進み,該当部分についての論文原稿が書き終わった。また,それにとどまらず,全球気候実験に関する実験も遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度にとりかかった全球気候モデル実験をさらに進める。それが終わり次第,論文原稿をまとめ,完成させる。また並行して,大気と海洋を理想化した数理モデルを用いた理論研究を始める。本研究では,先行研究が現実を捉えているかを明らかにし,物理メカニズムを特定することを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行のため,他教員の学会渡航費等がキャンセルとなり,学科の予算が大量に残ったため,まずそちらを有効利用することに努めた結果,本年度の予算を使い切るにいたらなかった。新型コロナウイルス感染症の流行が収束次第,国内外の学会において研究成果をより積極的に国外に周知するため,翌年度分として請求した助成金と合わせて,次年度使用額を使用する。
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