2019 Fiscal Year Research-status Report
観測ビッグデータを活用した変分法データ同化の高度化
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19K23467
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
藤田 匡 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 主任研究官 (50847283)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 観測誤差相関 / データ同化 / 高頻度高密度観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
気象観測技術の高度化に伴い、観測データの高頻度高密度化が急速に進んでいる。一方で、観測データを数値予報システムに反映するデータ同化において、観測誤差の時間空間相関を適切に扱う方法は十分に確立していない。このため、多数の観測データが間引かれ、活用されるのは一部にとどまっている。本研究では、高頻度高密度の観測ビッグデータを十分に活用し気象予測に役立てるために必要となる、データ同化技術の高度化を検討する。観測誤差相関をモデル化し、高度なデータ同化手法である「流れに依存する背景誤差」を取り入れた四次元変分法により同化することを試みる。高品質のデータの蓄積があるレーダードップラー速度を取り上げる。 2年計画の1年目となる2019年度は、札幌レーダーについて、調査を進めた。約一週間のデータ同化サイクルの統計から観測誤差相関を推定し、特性を調査した。観測誤差が、時間、空間方向に相関を持つことを確認し、相関幅のレーダーサイトからの動径距離や予報時間への依存性を調査した。得られた観測誤差相関の特性を踏まえて変分法に導入するためにモデル化し、単純な変分法データ同化でその効果を確かめた。観測誤差相関を考慮することで、高密度の観測の詳細な情報が、より偏りなく解析値に反映されることが分かった。また、四次元変分法、及び、「流れに依存する背景誤差」を取り入れた四次元変分法において、観測誤差相関を考慮して札幌レーダードップラー速度を同化する比較実験を行った。高密度、高頻度のドップラーレーダー観測の有効活用のためには流れへの依存性を考慮することが望ましいことが分かった。 研究計画の遂行に必要なシステムを一通り実装し、1レーダサイトの短期統計による結果で観測誤差相関の特性と高頻度高密度観測データ同化における効果、「流れに依存する背景誤差」の有効性について定性的な理解が得られており、研究計画は順調に進展している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、2019年度に「①誤差特性のモデル化」、2020年度に「②誤差相関を考慮したデータ同化システム」、「③背景誤差の高度化による検討」に取り組むことを目標としていた。 2019年度の課題①は、ドップラー速度の観測誤差相関の時空間構造を調査しモデル化することを目標とする。しかし、2019年度の実際の取り組みでは、観測誤差相関の分析手法の確立と定性的な振る舞いの把握を優先することとし、調査対象を札幌レーダー1サイトのみに限り、また、統計期間についても短期間に限った統計による分析を行った。得られた結果に基づいて変分法に組み込むためのドップラー速度観測誤差の時空間相関構造のモデル化を行った。 一方で、対象はやはり札幌レーダーに限定したが、研究計画全体で必要となるシステムを実装して分析手法を確立することを優先し、当初2020年度の目標としていた課題②、③についても2019年度に実施した。すなわち、簡易な変分法を実装し、簡易変分法における観測誤差相関の効果を調査した。また、四次元変分法にドップラー速度の観測誤差相関を組み込む仕組みや、「流れに依存する背景誤差」を与えるためのデータ同化アンサンブルを実装した。これらを用いて四次元変分法、及び、「流れに依存する背景誤差」を導入した四次元変分法による高頻度高密度観測の同化にも取り組んだ。 これにより、研究計画を遂行するのに必要な、基本的な枠組みとなる実験システムを一通り実装し、観測誤差相関とその変分法データ同化における効果について定性的な理解が得られた。このようなことから、研究計画は全体的に順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は当初計画の目標に従い、2019年度に一通り実装した実験システムを用い、必要に応じて拡張しつつ、札幌以外のドップラーレーダーサイトや他の期間についても対象を広げて同様の解析を行い、より一般的な結果を得る。観測誤差相関特性の統計的推定、また、簡易変分法における観測誤差特性の効果の分析、さらに、四次元変分法や「流れに依存する背景誤差」を導入した四次元変分における高頻度高密度観測のインパクトの調査を行う。インパクト調査においては、複数のサイトによるドップラー速度やそれ以外の観測データも含めたデータ同化サイクル実験を行い、気象予測への効果を調査することを目指す。また、2019年度に行った調査について投稿論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
2019年度は研究計画全体を遂行するために必要となる実験システムの構築、及び、定性的結果の分析を優先した。このため、2019年度に得られた結果の論文等での成果発表を2020年度に持ち越すことになり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は2020年度分と合わせて、2019年度、及び、2020年度に得られた結果の論文や研究集会等での成果発表を中心に使用する計画である。
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