2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of the solar fine magnetic field structure for solar wind acceleration
Project/Area Number |
19K23472
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
塩田 大幸 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所電磁波伝搬研究センター, 主任研究員 (90462192)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 太陽風 / 太陽磁場 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽風は、約11年の太陽活動周期の間に形を変えていく太陽の磁場に応じてその分布が変動していく。太陽活動極小期には太陽極域から流れ出す高速太陽風が形成され、その形成過程を解明するのが本研究の目的である。 太陽観測衛星「ひので」は、2006年の打ち上げ以降2007年より太陽極域磁場の観測を定期的に行っている。第24活動周期(2008年12月-2019年12月)の間に、太陽極域の微細磁場構造の分布の変動を詳細に解析を進めた。その結果、太陽活動極小期に太陽極域に存在する磁場局在構造(磁気パッチ)が形成されていく過程をとらえた。本研究では、この24周期の開始前から終了後までの期間の太陽極域磁場の変動を解析し、太陽活動極小期に極域磁場強度が最大になり、活動度の極大になる時期に極性が反転、さらにその後の極小期に極磁場強度が最大化する過程をとらえ、磁気パッチの分布の変動も合わせて解析した。 また並行して、太陽コロナ全球を高解像度で再現するための磁気流体力学シミュレーションコードおよび観測データに基づいて初期条件を計算する磁場モデルの開発を進めている。観測に基づくポテンシャル磁場モデルから計算した磁力線情報と磁力線に沿った1次元のWave/Turbulence-driven (WTD) MHD simulationを組み合わせて実行し、惑星間空間シンチレーション(IPS)観測から求められた太陽風速度と比較することで、モデルの検証を進めた。その結果高緯度では、従来のWang-Sheeleyモデルで推定される速度と比較して、simulationから推定される速度がIPS観測とよく一致した。この結果から、高緯度領域の太陽風は波動・乱流による加速で駆動されている可能性を示唆しており、このような磁場モデルと組み合わせた物理に基づく太陽風速度予測が将来的に実現し得ることを示している。この結果を2022年4月にAstrophysical Journalにて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初は、シミュレーションコードを先行して開発ののち観測データの解析に着手する予定であったが、第24活動周期(2008年12月-2019年12月)の終了が確認されたため、ひので等の衛星による観測データ解析を優先して進めた。2021年9月のデータを含めた論文の投稿の準備を進めている。 また2020年2月よりコロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、研究所への出勤の制限がかかり、コード開発・テスト等が遅れる要因となった。さらに1年研究期間を延長することで当初の目標の達成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
ひので衛星による太陽極域磁場観測について最新のデータを追加解析した上で論文にまとめて投稿予定である。 3次元のシミュレーションと磁場モデルのテスト計算を行った後、1次元シミュレーションと磁場構造と太陽風の関係を明らかにする。とくに表面に近い領域の微細な3次元磁場構造の違いに着目するとともに太陽圏とのつながりについて最新の探査ミッションのデータとの比較による解析を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための出勤制限の影響を受け、研究の進捗及び論文執筆に遅れが生じた。そのため、研究期間の延長を申請し、論文出版のための投稿料として計上していた金額を次年度に繰り越した。このように繰り越し分は論文投稿のために使用する予定である。
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