2021 Fiscal Year Research-status Report
プレソーラー粒子の化学反応から制約される原始太陽系円盤の物理化学条件
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19K23474
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
山本 大貴 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00846868)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | プレソーラー粒子 / 原始太陽系円盤 / 化学反応速度 / 円盤物理化学条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度ではSiC粒子の蒸発反応に注目し実験をおこなった。 出発物質は合成β-SiCプレートを使用した。蒸発実験は低圧H2-H2O混合ガス中で温度1250から1450°C, 全圧 0.5 Pa, H2/H2O比 ~ 57の条件でおこなった。質量減少量とサンプルサイズから蒸発速度を推定した。加熱後物質はFE-SEM-EDSで表面の状態の観察・分析をおこなった。 FACTSageを用いた熱力学計算から、実験温度圧力条件において実験条件でSiCはアクティブ酸化 (表面にSiO2層を形成しない蒸発機構) を通して蒸発すると推測される。全ての実験サンプルにおいて加熱により質量が減少した。表面のSiO2層形成はFE-SEM-EDSによる分析では確認できなかった。 SiCの表面からの蒸発フラックスは、T>1350°Cより高温では温度に大きく依存せず、一方でT<1350°Cでは大きく温度に依存していた。このことは高温条件で水分子の供給量が、低温条件で表面での化学反応課程が全体の反応速度を律速していることを示している。1250から1350°Cの温度範囲で推定した表面の化学反応課程に対応する活性化エネルギー (~570 kJ/mol) は、一気圧の還元ガス中でのSiC蒸発実験で推定された活性化エネルギー(556 kJ/mol) (Mendybaev et al., 2002) と同程度であることから同様の反応機構であることを示唆する。 原始太陽系円盤の応用から、プレソーラーSiC粒子の原始太陽系円盤での生存条件は円盤ガス寿命の時間スケールで800°C以下であることが推定された。またプレソーラーSiC粒子がCAI形成イベントを経験した場合、典型的なサイズのプレソーラーSiC粒子は生き残れないことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加熱炉が通常使用を開始し、反応律速段階、表面でのSiC蒸発効率、表面での反応速度などを順調に取得できている。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱後物質の表面のより詳細な観察、具体的にはTEM分析によるSiO2層形成の有無を確認する。 H2Oガスだけを流しながらおこなう酸化的環境下での実験から、SiO2が表面に形成された場合のSiCパッシブ酸化の時の蒸発機構や速度を推定する。これにより原始太陽系円盤でのあらゆる環境下でのSiC蒸発の速度の推定が可能となる。
また非晶質アルミナとH2Oガスとの酸素同位体交換実験をおこなう (現時点で適切な実験条件は推定されている)。
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Causes of Carryover |
残額の有効な使用方法がなかったため、次年度の少額物品の購入に充てる
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Research Products
(1 results)