2022 Fiscal Year Annual Research Report
プレソーラー粒子の化学反応から制約される原始太陽系円盤の物理化学条件
Project/Area Number |
19K23474
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 大貴 九州大学, 理学研究院, 助教 (00846868)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | プレソーラー粒子 / 炭化ケイ素 / アルミナ / 原始太陽系円盤 / 蒸発 / 酸素同位体交換 / 残存可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、太陽系誕生以前に形成されたプレソーラー粒子のうち炭化ケイ素 (SiC) 粒子およびアルミナ粒子の原始太陽系円盤での残存条件を決定するために、初期太陽系円盤を模した環境下での蒸発・酸素同位体交換実験をおこなった。 SiCのH2-H2Oガス中での蒸発実験のため、新たに高温真空加熱装置を構築した。1450から1250°C, 全圧0.5, 2.5 PaでH2/H2O比 ~230から420のH2-H2O混合ガス中での実験により、蒸発量の時間変化が観察された。加熱後物質の表面にはTEM分析により~5から10 nm程度の薄い酸素に富む層が観察され、実験条件においてSiO2層形成の可能性がある。高温領域 (~1350から1450℃) では温度に大きく依存しない蒸発速度が観察され、これはH2Oガスの表面への供給量が反応を律速していることをしめしている. 一方、低温領域 (1250から1300℃) では、蒸発量は加熱温度に大きく依存した。表面での化学反応プロセスが速度を律速している可能性をしめしている。これらの観察および速度データから、原始太陽系円盤でのプレソーラーSiCはCAI形成時の高温プロセス中に完全に蒸発することがわかった。またSiC蒸発反応はプレソーラーコランダムの特異的な酸素同位体組成の消失反応よりも短い時間で起きることで、プレソーラーコランダム粒子よりも先に原始太陽系円盤で消失することがわかった。 アルミナに関しては、先行研究をもとに合成した非晶質アルミナを用いて低圧H2Oガス中での酸素同位体実験をおこなった。赤外分光分析から、同位体交換にともなう顕著なピークシフトがあることがわかり、非晶質ケイ酸塩と同程度の酸素同位体交換速度を持ちうることがわかった。この結果は、プレソーラー非晶質アルミナがプレソーラー非晶質ケイ酸塩と同程度の円盤での生存率を持つことを示している。
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