2019 Fiscal Year Research-status Report
時間拡張モデリング手法を用いた原子論に基づく転位の上昇運動機構の解明
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19K23487
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新里 秀平 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10853202)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 転位の上昇運動 / 時間拡張モデリング / ナノ構造材料 / 原子モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶材料中の線欠陥である転位の運動は材料の塑性変形の主たる素過程であり、高温ではすべり面外に移動する特異な上昇運動をすることで高温特有の塑性変形をもたらすことが知られている。しかし、近年ではナノ材料において室温環境下でも転位の上昇運動が発生するという非常に特異な現象が発見された。これは、室温下ではこれまで全く予測されていなかった変形機構であり、ナノ構造物を実用環境下で利用するうえで解明すべき非常に重要な新規現象である。しかし、現状では転位の上昇メカニズムの原子論的詳細は未解明である。本課題では時間拡張モデリング手法を用いることで転位の上昇運動機構の原子論・エネルギー論的解明を目指し、令和元年度はナノスケール構造材料における室温転位上昇機構を解析するためのモデルの検討と、加速分子動力学法による時間拡張モデリング基盤の構築および検討を行った。電子顕微鏡を用いて実際に観察されているナノ構造材料中の転位の上昇運動前後の原子描像をもとに、室温転位上昇の発生する材料とその結晶構造、転位の構造を特定し、原子モデルの作成を行った。刃状転位を含む金属薄膜に対して圧縮荷重条件下での加速分子動力学解析を実施することにより、室温条件下での短距離の転位上昇が発生することを確認し、その過程での原子の移動軌跡を獲得した。これにより、反応経路探索手法を用いた転位上昇過程のエネルギー論的検討を行うために有益な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初利用を予定していた時間拡張モデリング手法であるDiffusive Molecular Dynamicsについては有効性の検証段階であるが、代替手段として異なる加速分子動力学モデリングの枠組みについても構築・検証を行った。構築した時間拡張モデリング手法を転位上昇過程の解析に適用し、ナノ薄膜中の転位上昇過程における原子描像を獲得することができた。以上の情報はエネルギー論に基づく反応経路解析で重要となる知見である。以上より、本課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
室温転位上昇過程の反応経路解析を行うことにより、ナノ構造材料における室温得意変形プロセスの熱活性化パラメータを獲得する。また、構築した時間拡張モデリング手法を材料表面での原子拡散現象にも適用し、転位上昇過程に対する表面拡散の影響の検討・評価を行う。さらに、Diffusive Molecular Dynamicsの有効性の検討も引き続き並行して行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定より大規模並列計算機の利用料が少なくなったこと、および新型コロナウイルス感染症の影響により予定していた研究成果発表のための出張が中止となったため次年度使用額が生じることとなった。令和2年度においては物品費の他、研究の進展にともないより多くの計算機資源を要することから大規模並列計算機の利用料として計上する。
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Research Products
(5 results)