2019 Fiscal Year Research-status Report
2000℃酸化雰囲気で熱力学的に酸化を抑制する耐熱高エントロピー構造材料の創生
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19K23496
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
新井 優太郎 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (70844439)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ハイエントロピーセラミックス複合材料 / 溶融含浸 / 耐熱材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
【①炭素繊維及び炭素からなる基材の作製】長さ~6mm程度のピッチ系炭素繊維、UHTC(TiC, ZrC, HfC, NbC, TaC)粒子とレゾール型フェノール樹脂を混合・脱泡し、80℃で24h及び130℃において圧力(10~20MPa)で30min硬化することで基材の前駆体を作製した。これをAr雰囲気において950℃12h炭化することで、基材を作製した。上記のように前駆体を用いた基材の作製条件の最適化が完了しており、繊維体積含有率を10~50vol%、UHTC粒子を0~20vol%まで制御可能な作製プロセスを確立した。
【②耐熱合金の溶融及び基材への含浸】Ar雰囲気中、大気圧下、1700℃程度で溶融するZr-Ti合金(63at%Ti-37at%Zr)の基材への含浸によりC/RHECsの作製を試みた。①で示した基材上にZr-Ti合金を載せ、Ar雰囲気中において昇温速度50℃/min、最高温度1750℃で15min保持することでC/RHECsを作製した。溶融温度1750℃は熱力学データベースで予測した1700℃とほとんど一致していることから、複雑な合金系を用いた溶融含浸プロセスに対するMIの有用性が示された。Zr-Tiが溶融し、炭素プリフォームに含浸されたことが確認された。また、Zr-TiとCが反応することで形成したハイエントロピーな炭化物も確認された。さらに、残留した金属内部にも炭化物粒子のみに存在するHfが検出されたことから粒子と金属から生成した複雑でハイエントロピーな固溶体が形成されていることが確認できた。これらの結果から反応で生成する炭化物及び残留する合金どちらもハイエントロピー化することが示された。これは単に複数種の炭化物と炭素を焼結しただけでは得られないため、溶融含浸を用いることの優位性が示されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の計画である「C/RHECs前駆体の作製条件の最適化」および「C/RHECsの作製および組織評価」は予定通り達成することができた。 前駆体の作製では溶融金属と反応する炭素の形成が確認できた。C/RHECsの作製では前駆体中に導入した超高温セラミックス(UHTC)粒子(TaC、NbC、HfC、ZrC、TiC)と溶融金属によりハイエントロピー化したマトリックスが形成したことを走査型電子顕微鏡による観察や元素分析により明らかにしている。また、特に溶融金属と反応しにくいピッチ系の炭素繊維を選択したことで、炭素繊維は溶融含浸後も残留していることが確認された。炭素や各粒子との反応は熱力学データベースを用いた解析も進んでいる。一方で、粒子の含有量の変化に伴い、溶融金属が厚さ方向に含浸する距離に違いが見られた。これは各粒子と溶融金属(Zr-Ti合金)の濡れ性の違いに起因していると考えられ、新たな学術的な課題を見いだすことができた。 また2019年度内に、2020年度実施予定の酸化試験についても実施計画を作成できており、準備に取り掛かっている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は2000℃酸化雰囲気に曝露した際のC/RHECsの損耗挙動の評価である。当初計画した酸水素バーナーを用いた試験については、必要物品を2019年度から少しずつ集めており、残りの必要なジグの図面も揃っている。しかしながら、新型コロナウィルス蔓延の影響により現時点で実験を始められない状況に陥っている。酸水素バーナーによる酸化試験が実施不可能となる状況も考えて、抵抗加熱による実施及び2000℃酸化雰囲気を達成できるアーク風洞試験施設の利用も考えている。抵抗加熱の使用に際しては、必要となる電力を現在見積もっており、試験系の再設計を行っている。また、アーク風洞施設は民間企業の施設であり、一時期借用して試験を実施できるように、現在試験条件を詳細に打ち合わせている。酸化試験後の評価には酸化後の重量変化、寸法変化をパラメータとすることを計画している。
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