2020 Fiscal Year Annual Research Report
2000℃酸化雰囲気で熱力学的に酸化を抑制する耐熱高エントロピー構造材料の創生
Project/Area Number |
19K23496
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
新井 優太郎 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (70844439)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ハイエントロピーセラミックス / セラミックス複合材料 / 溶融含浸 / 酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では1800-2200℃の酸化雰囲気に晒されることが予想される次世代航空機用耐熱部材の潜在的な候補として,エントロピーの増大による反応の抑制が期待される耐熱ハイエントロピーセラミックス複合材料(C/RHECs)の創成及びその作製プロセスの確立を目指した。 カーボンブラック及び炭化物粉体(TiC, ZrC, HfC, TaC, NbC)とピッチ系炭素繊維から構成される前駆体に対してZr-Ti合金を1750℃で溶融含浸することで,直径約20mm,厚さ約4.5mmの炭素繊維強化耐熱ハイエントロピーセラミックス複合材料(C/RHECs)を作製した。マトリックスはti, Zr, Hf, Ta及びNbの炭化物の固溶体となっており,マトリックスとしてRHECsが形成されていることを確認した。Zr-Ti合金は原料粉体と完全に反応し,未反応金属の残留は見られなかった。一方で,炭素繊維は溶融含浸後も残留しており,Zr-Ti合金によるマトリックスのその場合成の有効性が示された。 得られたC/RHECsはアーク風洞試験装置を用いて,材料表面に1.2MW/m2程度の高エンタルピー気流に曝露することで,およそ2000℃における酸化挙動を評価した。酸化後の表面は500~600μm程度の酸化層から構成されており,分析の結果から高エントロピー酸化物であることが示唆された。また,酸化層の下に未酸化領域が残留していた。本研究で作製したC/RHECは炭素及び炭化物から構成されているため,従来の耐熱材料で必須だったSiO2の酸化被膜を形成しないが,同じ温度域で従来材料と同等かそれ以上の酸化挙動を示した。このことからエントロピーを増大することで化学反応に伴うエネルギー収支を減少させるというコンセプトの有効性が示され,混合エントロピーが次世代耐熱材料を設計する際の有効なパラメータであることがわかった。
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Research Products
(2 results)