2019 Fiscal Year Research-status Report
バイオミメティクス自己修復滑液表面での潤滑現象解明と低粘度潤滑流体保持技術の開発
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19K23501
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
真部 研吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (80848656)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | バイオミメティクス / トライボロジー / 撥水 / 交互積層法 / 自己修復 / ソフト・インターフェース / 表面濡れ性 / Liquid-Infused Surface |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、近年注目を集める新たなバイオミメティクス表面である、ウツボカズラの表面を模倣した液体注入表面(Liquid-Impregnated Surface; LIS)を創生し、それを対固体摩擦を低減させる表面へと発展させる検討を行った。LISは滑落対象を液体としていたために下地層と潤滑層の表面張力を制御することにより対象液体を広げることが可能になっているが、対象物質を固体とする潤滑表面の場合は、上記に加え、下地層の形状、潤滑層の分子状態が潤滑性能に影響を与える。そこで、従来の構造による潤滑層吸着表面ではなく、分子的な潤滑層吸着表面を応用し、液体・粘性/粘弾性物質・固体の滑り性能を同時に向上させる表面を作製した。対固体の摩擦性能については、摩擦係数0.05という良好な潤滑性能を示した。これは基材であるガラスの摩擦係数0.7の1/10以下の値に到達しており、本バイオミメティクス表面がトライボ表面として有効であることを示している。また、摩擦により表面が損傷した場合においても、分子間力により潤滑層がその損傷部に自己修復的に流入することで、膜損傷後においても摩擦係数は0.08を示した。本成果は、ウツボカズラ模倣表面において低摩擦性能を実現し、またその詳細観察・分析により自己修復性能を見出した新たな知見が評価され、John Wiley & SonsのAdvanced Materials Interfaces誌(Impact Factor:4.713)に論文が掲載された。また、表面濡れ性の制御のみで摩擦を低減可能であるという新規の知見が得られたことから、この基礎現象を更に発展させ、以降の研究計画へと繋げていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度目標としていたステージ1に当たるLIS型バイオミメティクス表面による潤滑表面の作製に成功し、目標に到達した。本成果は、John Wiley & SonsのAdvanced Materials Interfaces誌(Impact Factor:4.713)に論文が掲載され、また注目論文として同誌の表紙にカバーイメージが採用された。本雑誌は、MATERIALS SCIENCE及びCHEMISTRY分野のQ1ジャーナルに分類されており、成果発信の観点から本年度の計画が順調に進展でき、新たな知見を創出することに貢献したことを示している。既に計画のステージ2に当たる下地層・潤滑層の最適化による潤滑性能の向上に関して実験結果が得られており、最終年度に到達予定のステージ3に当たる低粘度潤滑流体保持潤滑膜についても研究を開始できているため、“おおむね順調に進展している。”といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画が順調に進展しているため、計画書通りに今後の研究を推進していく。下地層 には微細加工と表面分子修飾を実施することで、古典的な濡れ理論に基づき、下地層と潤滑層を最適化する。これにより、何が潤滑層の流動/消失に寄与するかが明らかになり、長期で滑り性を示す表面の構築へと繋がる。更に、表面の濡れ拡張係数を制御することにより、下地/潤滑液/低粘度液体の三相系潤滑表面を構築し、従来困難であった水等の低粘度潤滑液を厚みのある状態で保持することで、これまで以上の摩擦係数の低減を示す表面を創生していく。
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Causes of Carryover |
本年度における論文掲載に関わる費用において、当初の計画していた時点よりも対ユーロで円高になっていたために、年度末月時点で167円の次年度使用額が生じている。次年度の使用計画においては、研究が順調に進展していることから、消耗品費、計測費、研究成果の論文に関わる費用(英文校閲や掲載費)として用いる。
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