2019 Fiscal Year Research-status Report
振動式力センサを有するマイクロフローセルを用いた高速細胞特性計測
Project/Area Number |
19K23505
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Research Institution | Kanagawa Institute of Industrial Sclence and Technology |
Principal Investigator |
杉浦 広峻 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 人工細胞膜システムグループ, 研究員(任期有) (10844805)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | MEMS / microTAS / 細胞の力学特性計測 / 振動式センサ / フローサイトメトリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,動的力センサ技術を実装したマイクロフローセルで,ハイスループットな細胞の力学特性計測が実現可能かという機械工学的知見の探求を進めている.従来マイクロ流体チップを用いて検討されてきた同様の計測は,細胞の搬送に,計測を独立過程とした点,流体制御が困難であった点,計測動作の所要時間が長く,高いスループットを実現できていない点に問題があった.そこで,フローサイトメトリの手法を転用し,細胞の力学特性計測技術をAFMに準ずる動的手法に拡張する手法の検討を行った.まず,AFMの自励式振動式力計測技術の転用による,力計測技術の理論開拓をすすめた.従来は画像センサを用いて構造物の変位を読み取るセンサを作製,使用していたが,構造物のたわみを利用するため,流路中で不要な領域に細胞を圧縮して計測する必要があり,スループットの口上を期待できなかった.そこで新たに,レーザを用いた変位計測技術と,発振回路を形成して微細構造を共振周波数で振動させる回路技術を開発した.また,この回路を用いて,圧電アクチュエータを駆動し,シリコンの振動式力センサの構造体を実際に共振周波数で振動させることに成功した.本成果はRobomech2019にて発表を行った.また,本研究の申請段階では,フローサイトメトリを基軸に,高いスループットを実現する技術を開拓するものであったが,さらに汎用的かつ制御性の高い,細胞様の微小球体の搬送を行う機構として,セル形状のマイクロ流体ユニットに交流電場を形成して,誘電泳動力によって細胞を搬送する技術確立した.本研究の成果は,Robomech2020にて公開予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計測の学理創生と,デバイスを用いた要素技術の実証実験については,当初の想定,計画に則って進めている.とりわけ,従来解析の難しかった,細胞の粘弾性計測について,自励振動式力センサの周波数遷移と振幅の減衰量を打ち消すためのフィードバック制御入力を用いてパラメータ同定するといった,具体的な方式を確立した点は大きい.さらに,レーザを用いた高速変位計測,励振回路の試作を完了させて,マイクロフローセルの開発を進めているフェースに入っているため,要素技術に関しては,概ねの基本指針を達成できていると言える.今後,学術誌などで,積極的に成果を発信していきたい. 一方で,実際に細胞を利用したシステム全体の機能評価を達成することができていないため,今後1年で重点的に検討することが望まれる.また,現状では,フローセル部分の作製コストが高い.定量データを増やし,実験効率を上げるため,さらなるデバイスの小型化や,簡素化などを重点的に検討していく必要がある.また,現在のシステムでは,細胞を一つずつ安定的に供給する技術を達成できていないため,細胞がデバイスに頻繁に固着し,計測を安定的に行うことは,難しい.そこで,デバイスの構造を可能な限りシンプルにし,計測の安定性を確保することが,喫緊の課題である. また,デバイスの設計に予測以上の作振動式力センサについては,従来のシリコン式機械振動子を,材料特性の優れたquartz crystalline resonatorに変更する算段を立てており,機械的な剛性を確保しながら,高い力計測分解能と応答性を実現できる可能性も検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
ファーストプロトタイプの実証実験を成功させて,成果を発信することを第一目標とする.その上で,現在,計測の基礎理論の骨子が定まっているが,各要素の性能追求という点では,更に学術的検討を要する部分が多い.例えば,高速変位計測で用いているレーザ変位計の,高次回折光や光源のコヒーレンスに依存するのノイズの影響低減,高精度化や,発振回路の移送ジッダ低減,Q値の安定的な制御,フローセルの構造最適化,センサのさらなる改良など,要素展開してもなお,重点的に研究する余地の多い領域がある.そのため,ファーストプロトタイプで,性能を律速する重要な要素を洗い出し,各論に関してさらなる検討を詰めることで,学術的価値の高い研究成果の配信につなげる.また,計測対象の細胞であるが,昨今の防疫対策などの喫緊の課題をを鑑みて,例えば遺伝子やウィルスのトランスフェクションなどの影響を,機械的なフローセルのスクリーニングによって実現できないか,検討をすすめる.
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Research Products
(1 results)