2019 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト型硫化物のエピタキシャル薄膜作成に基づく新規緑色発光半導体の提案
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19K23507
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
永井 隆之 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 研究員 (30851018)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | エピタキシャル薄膜 / 半導体 / ペロブスカイト / 硫化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、オプトエレクトロニクスの分野で広く用いられているのはGaNやGaAsといったⅢ-Ⅴ属半導体であるが、これらの半導体群は緑色領域で発光効率が著しく減少する「グリーンギャップ問題」を抱えており、緑色領域で高い量子効率を示す新しい発光半導体の探索が切望されている。本研究は新規緑色発光半導体として期待されるペロブスカイト型硫化物SrHfS3のエピタキシャル薄膜を作成し、その発光機構の解明や発光デバイスの作成を目的とするものである。 第1年度である2019年度は未報告のSrHfS3のエピタキシャル薄膜の作成および成膜条件の最適化を試みた。その結果、不純物相はわずかに存在するものの、SrHfS3のエピタキシャル薄膜を作成することに成功した。しかしながら、作成した薄膜では多結晶体で見られる緑色発光が観測されなかった。この原因を現在究明している段階であるが、本研究代表者らはまず薄膜作成の際に使用する硫化物ターゲットに含まれる不純物由来の酸素が原因と考え、ターゲットの高品質化に取り組んだ。その結果、これまではSrHfS3多結晶体を作成する際に、SrSとHfS2を原料として用いていたが、酸化物ペロブスカイトSrHfO3を二硫化炭素CS2中でアニールしてSrHfS3を作成する合成手法の方が高品質のターゲットを作成できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度計画に挙げたエピタキシャル薄膜の作成には成功し、2019年度の計画はほぼ達成された。薄膜では、多結晶で見られた緑色発光が観測されておらず、これが現在課題として残っているが、CS2を用いた高品質ターゲット作成手法の確立など研究計画で挙げた以外の成果も出ており順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はまず、これまで得られた成果の論文化に注力し、エピタキシャル薄膜で発光が見られない原因の究明とその解決に取り組む。また、多結晶体を用いてフォトルミネッセンスの温度依存性や励起密度依存性など詳細な発光特性評価を行うことによって、SrHfS3の緑色発光のメカニズムの解明にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度にロータリーポンプやイオンゲージといった真空関連機器を購入予定であったが、所属研究室内のものを代用あるいは修理した結果、新たに真空関連機器を購入する必要がなくなりその分の金額が余ってしまった。また、参加を考えていた学会が軒並み中止になるなど旅費も余ってしまったため、その分の繰越金が生じた。2020年度は、本研究計画を遂行する中で、誘電特性など研究提案時には着目していなかった物性測定からも重要な知見が得られるのではないかという考えに至ったため、誘電測定等の物性測定装置の購入を検討している。さらに、2019年度の繰越金を利用して計算機の購入も考えている。
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Research Products
(1 results)