2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23509
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
定本 知徳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (40839966)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | エネルギー散逸率 / 潮流設計 / 制御理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,実施計画に基づき,第一にエネルギー散逸率(以下,散逸率)を介した潮流状態全体の特徴づけを行った.具体的には,電力ネットワークの主要素である発電機と需要家の散逸率を導出した.ネットワークを介して相互接続した結果の系統全体としてのエネルギー散逸率も導出済であり,ここで導出した散逸率の逆演算に基づき,系統全体のエネルギーが減少,つまり安定な潮流状態の設計手順を考案した. しかしながら,実データを基にしたベンチマークシミュレータを用いて考案した設計法の有効性を検証したところ,適用可能な電力系統のクラスが限定的であるとの結果が得られた.これは,導出された系統全体の散逸率の保守性が高いことを意味している.そのため,保守性の少ない指標を用いた潮流設計法の考案へとアプローチをやや変更することとした.具体的にはつぎの二点に取り組んだ. 1)H2ノルムに基づく安定度の高い潮流設計法:H2ノルムは散逸率と近しくシステムのエネルギー減少率を測る指標のひとつである.これをもちいた安定度の高い潮流設計法をベンチマークモデルを用いた数値シミュレーションで検討し,有効性を確認した.本成果は,国際学術雑誌に投稿中である. 2)より保守性の少ない散逸率に基づく潮流設計法:散逸率は,システムに印加した入力(仕事)がどの程度目減りして出力されるかとして定義される.したがって,同一のシステムであっても入出力を異なるものに選べば異なる散逸率が導かれる.より保守性の少ない散逸率を導く入出力を選ぶことで,当初のアプローチに基づく潮流設計法が可能であると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初に想定していた散逸率を用いた数値シミュレーションでは限定的な結果しか得られていないものの,研究実績の概要(1)に記載した,これと近しい指標を用いた潮流設計法は十分有効であることが確認されていること,加えて(2)に示すように,新たな散逸率導出に基づく設計法へと着手できているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要(2)に記載の通り,より保守性の少ない散逸率を導く入出力をどのように選ぶべきかが本質的な課題となる.発電機のエネルギーフローを表す物理的な考察が,本課題解決の鍵になると考えている.なお,散逸率の導出以降の手順は既に導出済みのものと全く同等であるため問題ないと考えられる.
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響に伴い,参加予定であった会議や学会等が全てキャンセルとなったため.本年度も米国共同研究者のもとを訪問して研究を進める予定でいたが,遠隔会議用システムの充実への利用を検討している.
|
Research Products
(2 results)