2019 Fiscal Year Research-status Report
先進的系統連系インバータが具備すべき電力系統の過渡安定貢献特性の解析および指標化
Project/Area Number |
19K23521
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
平瀬 祐子 東洋大学, 理工学部, 准教授 (50843778)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | マイクログリッド / 過渡安定性 / Matlab/SIMULINK / 同期化力 / IEEE 9BUS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、系統(グリッド)に接続される種々の分散電源に対して、系統過渡安定化のために求められる貢献機能を精査し、その検証手法を提案するための実証試験を行うことであり、(a)電力系統の過渡動揺・安定の物理的・数学的理論を明らかにする、(b)連系インバータにに対する過渡安定貢献機能の実装手法を提案する、(c)一方で、電源側の安定化機能実装手法に依存しないような、検証指針を策定する、(d)上記事項の実証試験を行う、という計画を遂行中である。 (a)については、グリッドの小分割集合であるマイクログリッドを複数想定し、その間に働く同期化力に注目した、電力系統の過渡動揺・安定の数学的小信号モデルを確立した。小信号モデルの確立には、大阪大学の客員教授Prof. Hassan Bevraniを招聘し、教授の著書やシミュレーション手法を参考に、同期化力を動的に計算する機能を追加した。この小信号モデル理論値と、Matlab/SIMULINKを用いた数値シミュレーション結果の比較を行って、理論の妥当性を確認した。本件は学生卒業論文にまとめるとともに、その成果は令和2年電気学会全国大会(東京電機大学)にて発表を行った。 (b)については、系統に慣性力を付与する機能をもつ系統連系インバータの詳細プログラム論理をMatlab/SIMULINKでモデル化し、大規模系統(IEEE 9BUSモデル)に接続してシミュレーション解析を行った。これにより、周波数および電圧安定の定量的評価を得た。 (学生卒業論文)。 (c)と(d)については、本年度の結果を公的機関や学外研究者と共有し、次年度に実験機器を準備して行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
系統に慣性力を付与する機能をもつ系統連系インバータの各種制御手法について文献を参照し、比較検討を行うことで、調査は計画通り完了した(2019/3Q~4Q)。 系統貢献機能を持つ分散電源の、Matlab/SIMULINKを用いた理論検証および数値シミュレーションモデル化についても、計画通り完了した(2019/3Q~4Q)。小信号モデルの作成のために、2019/10に大阪大学の客員教授Prof. Hassan Bevraniを招聘し、教授の解析法に関する研究生向け講演会を開催し、その手法をベースにしたモデル化と検証の結果報告書は、学生卒業論文と令和2年電気学会全国大会における発表という形で完了している。 一方で上記分散電源を比較的大規模な系統に接続したときの効果や影響を把握するためには系統側の情報が必要であり、それらの情報を上記全国大会(2020年3月予定)で収集予定であったが、新型コロナウィルスの影響で中止となり、学外の研究者との打ち合わせの機会も得ることができなかった。2020年度の状況に応じて、ウェブ会議など情報交換の機会を得る必要がある。 また、インバータ実証試験を2020年度に予定しているため、上記シミュレーション結果をもとにした電力変換装置(インバータ)を2019年度中に入手予定であったものの、メーカ側が納期に間に合わせることができず、かつ要求仕様を満足できる見込みが立たなかったため、そのメーカの製作を中断した。代替のインバータは、2019年度中に入手を完了しているが、ソフトウェアや試験環境の構築については当初の予定通り、2020年度から開始し(2020/1Q~2Q)、後半に実証試験予定である(2020/3Q~4Q)。
|
Strategy for Future Research Activity |
検証や連系規定の指針を策定するためには、学外研究者との情報交換が必須であるものの、新型コロナウィルスの影響で任意に執行計画を立てられないため、まずは、マイクログリッド(系統連系・非連系共に含む)実験設備の構築を先行する。大規模系統の実証試験を大学で行うことはできないが、分散電源の基本機能を確認する目的で、マイクログリッド実験設備の構築は必須である。 インバータのパワーブロックは、Imperix社製(スイス) PEB SiC 8024と、コントローラB-Box RCPを使用する。プログラムはACG SDKというツールを使うことで、SIMULINKから自動生成可能である。Imperix社の日本代理店㈱NEATによると、日本でB-Boxを導入した前例はなく、時間とリソースの少ない大学で、パワエレ実験環境構築の新手段を評価する意味で、意義を持つ。前例がないことからも、ACGの使用に時間を要すると予想され、プログラムの作成を2020/1Q~2Q、PEBの立ち上げに2020/2Q~3Q、実証試験に2020/3Q~4Qを予定している。 さらに、マイクログリッドには、大阪大学から移管予定の誘導電動発電機(DFIG)を接続し、その系統安定化効果を検証する予定である。DFIGの移管を2020/1Q、装置の立ち上げに2020/2Q~3Qを予定し、上記PEBと2020/3Q~4Qに並列予定である。このDFIGの駆動インバータはMyway社製で、コントローラはPE-Expert3を使用している。このコントローラは生産を終了しているため、将来的にはPE-Expert4にアップグレードすべきである。本研究の範囲内でアップグレードまでは困難であるが、PE-Expert3の構成を理解し、B-Boxとの相違を明確にして、今後の環境整備に繋げることを目標にしている。
|
Causes of Carryover |
系統安定化の期待の高い誘導電動発電機(DFIG)を、大阪大学から譲渡される予定であり、その移設費用として使用予定であったが、受け入れ側の実験室の整備が間に合わなかったこと、移設の費用が100万円前後になる見込みであることなどが判明し、移設を2019年度内から2020年度に変更した。次年度(2020年度)の交付額と合わせて移設費用に充填する。
|