2019 Fiscal Year Research-status Report
Difference voltage tracking in quantum metrology triangle
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19K23527
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松丸 大樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (30849146)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 電圧標準 / ジョセフソン効果 / 超伝導体 / 精密測定 / オームの法則 / SI単位 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子メトロロジートライアングル(QMT)実験における差電圧トラッキングを実現するための準備として、トラッキングを行うフィードバック機構における見積り、実測、シミュレーションを行った。本研究のプロセスを以下に示す: (1)量子電気標準の要素技術として、電流・電圧・抵抗の各物理量を同じ冷凍機チャンバ内で独立に発生させる。 (2)差電圧トラッキングにおいて中心的な役割を果たすマイクロ波のフィードバック機構を導入する。 (3)実際にQMT回路中での差電圧トラッキングを行い、比較測定の高精度化を行う。 令和元年度は、(1)及び(2)の課題に取り組み、フィードバック機構導入の目途を立てることができた。令和2年度には、引き続き(2)の課題を推進させるとともに、(3)の課題にも取り組む予定である。(1)の抵抗に関しては、すでに量子ホール抵抗アレイ素子によって1 MΩの量子化抵抗が実現している。電流に関しても極めて難しいとされていた単電子ポンプ素子による電流生成に成功している。本研究では特に電圧に着目し、量子化された電圧ステップの生成を、上記した抵抗及び電流と同じ希釈冷凍機チャンバ内で確認することに成功した。さらにマイクロ波のフィードバック機構の設計と評価を実施した。今後は、(2)で導入するフィードバック機構を完成させた後、(3)に該当するQMTにおける高精度な比較測定を行う。(2)においては、1/fノイズを含むランダムノイズにフィードバック機構を組み込んだ際のシミュレーションを行い、その標準偏差の変化を見積った。また、差電圧トラッキングの実行に必要な遅延時間の見積りと、ジョセフソン電圧標準素子を駆動するマイクロ波の周波数変化にかかる遅延時間の実測も行った。シミュレーション結果については応用物理学会(3月、上智大学)、遅延時間の評価結果については電子情報通信学会(3月、広島大学)にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ波フィードバック機構の導入に向けた遅延時間の評価及びシミュレーションを行い、実現の目途を立てることができた。量子メトロロジートラアングル実験でジョセフソン電圧標準素子を用いる際に必要な、微小電圧計・マイクロ波発振器・バイアス電流源・温度計を制御PCでコントロールするプログラムの作成に取り組んだ。このプログラムにおける、各装置のコントロールは概ね完了した。これと並行して、実際に使用する各装置の仕様書等からマイクロ波のフィードバックにかかる遅延時間の見積りを行った。また、1/fノイズを仮定した擬似ランダムノイズを生成し、その振幅の標準偏差が今回のフィードバック機構でどの程度変化するのかをシミュレーションした。実際に微小電圧計からの電圧を読み取り、その値に応じてマイクロ波の周波数を変化させた後再度電圧計の値を読み取るまでのフィードバック1回にかかる遅延時間の実測も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度第二四半期中に測定プログラムの構築を完了させる。ジョセフソン電圧標準素子を駆動するのに必要な周波数最適化と、電圧ステップのマージンチェック・フラットネス評価を行うプログラムの構築を行っていく。その後、測定する温度・周波数・電圧のデータを解析するために必要な機能を追加していき、フィードバック回路の実装を目指す。第三四半期中には、測定に使用した単電子ポンプ素子・量子ホール抵抗素子側のデータの導入を行い、ジョセフソン電圧素子側とデータを相互に共有するシステムを構築する。最終四半期終了までに、量子メトロロジートライアングルの差電圧測定にフィードバック機構を導入した際の影響を調べ、合成標準不確かさ0.1 ppmを目指す。フィードバックの遅延時間が長くノイズの影響を十分取り除くことができていない(目標とする不確かさに達していない)場合は、マイクロ波の切り替え時間がより短いマイクロ波発振器に交換するなど測定条件の最適化を行っていく。これらの結果をまとめ、学術誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の世界的流行の影響を受け、国内・国外を問わず多くの学会の現地開催が困難な状況となり、研究代表者が参加予定であった国内学会の中止が決定となった。そのため、旅費等に使用する予定であった予算が次年度使用額に計上となった。この予算を令和2年度分として請求した助成金と合わせ、購入計画にあったデジタルボルトメーター、マイクロ波コネクタ等の物品を購入予定。
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