2019 Fiscal Year Research-status Report
多層ネットワーク解析に基づく交通システムのリスクマネジメント
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19K23531
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
杉下 佳辰 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 研究員 (70845263)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ネットワーク科学 / 多層ネットワーク / 交通システム / 脆弱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3つの研究に取り組んだ。 (1)ネットワーク科学と交通工学の両分野における脆弱性研究について、その全体像を引用ネットワーク解析を用いて定量的に明らかにした。この成果を査読あり国際会議1件(EWGT 2019)で発表した。また、成果をまとめた学術論文は、現在、査読中である。 (2)航空システムは、複数の航空会社のネットワークから構成される多層ネットワークである。そして、各航空会社のネットワークは、時間とともにその構造が変化するテンポラル・ネットワークでもある。本年度は、ネットワーク科学におけるテンポラル・ネットワーク理論を応用し、各航空会社のネットワークの発展パターンを定量的に明らかにした。この成果は、査読あり国際会議1件(NetSci 2020)で発表予定である。また、この成果をまとめた学術論文を執筆中である。 (3)当初、計画していた上記2つの研究に加え、本年度は、社会的ネットワークにおける意見形成ダイナミクスに関する研究を行った。これは(2)と同様に、テンポラル・ネットワーク理論に関連するものであり、申請研究課題の遂行にも資する。具体的には、紐帯減衰ネットワークという新たな理論的枠組みを用いて、集団の意見形成ダイナミクスを理論的に分析し、現実の社会的ネットワークに特有の性質を明らかにした。この成果を査読あり国際会議2件(NetSci-X 2020, NERCCS 2020)で発表した。また、成果をまとめた学術論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、ネットワーク科学における多層ネットワーク理論の適用のみを計画していたが、テンポラル・ネットワーク理論を適用することで、航空ネットワークの発展パターンを定量的に明らかにするなど、当初の計画以上の成果が得られた。また、テンポラル・ネットワーク理論の応用として、社会的ネットワーク上の意見形成ダイナミクスに関する研究成果も得られており、現在までの進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の中では、アメリカ国内航空網に関するフライトデータを用いて、特に大手航空会社4社のネットワークについて、その時系列的な構造変化を分析してきた。今後は、アメリカ以外にもアジアやヨーロッパ等のフライトデータを入手・分析し、各航空会社の発展パターンを定量的に明らかにするとともに、社会経済的事象が航空ネットワーク構造に及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
当初予定では、ヨーロッパの航空会社のフライトデータを購入する予定でいたが、研究対象をアメリカ航空網へと変更したことにより、米国運輸統計局が公開する実データを使用可能となり、データの購入に未使用額が生じた。また、フライトデータの解析に当初の予定よりも時間がかかり、成果の発表を翌年度の学会へと変更したため、旅費に未使用額が生じた。さらに、論文の投稿も翌年度へと遅らせたため、論文投稿料にも未使用額が生じた。これらの未使用額は翌年度の成果発表に充てることにしたい。
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Research Products
(6 results)