2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23532
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬戸 里枝 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (70799436)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 陸域雲水量データ / 衛星マイクロ波 / アジア域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、2018年度までに自ら開発し、陸域雲水量の推定・同化を行うことを目的に改良を進めてきた大気陸面結合データ同化システムの、適用範囲を広げるために以下の二つの研究を行った。 一つ目は、これまで対象地域を主に日本としてきた本システムを、スリランカを中心とした南アジア域と中国の内陸部に適用した。適用の結果、本システムは気候帯・降水特性の異なる地域でも高いパフォーマンスを示した。ただし、地域によって雲水量の平均的な値は異なるため、最適化の際に設定が必要な雲水量の上限値を、適切に設定する必要があることが示された。また、本システムは大気モデルで再現された大気プロファイルを基にして雲水量の推定を行っているため、大気モデルの結果にも一定の影響を受ける。そのため対象地域に適した大気モデルの設定を吟味する必要があることがわかった。 二つ目は、本システムを広域に適用するにあたって、様々な陸面状態の地域を対象とすることになるため、適用の妥当性および適用するための陸面表現の条件を検討する必要がある。衛星マイクロ波による陸域雲水量の推定において必要となる、陸面からのマイクロ波放射の表現精度を、野外観測を行って検証した。検証の結果、雲水量を適切に推定するために必要なマイクロ波放射の陸面輝度温度の再現精度と、その許容誤差が土壌水分にしてどの程度となるかが、異なるマイクロ波の波長(36と89GHz)に対して明らかとなった。この野外観測から得られた知見は、本システムの広域適用のための基礎情報となるほか、他の衛星マイクロ波による雲水量推定手法を陸域に用いるためにも、広く活用され得るものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、アジアを中心とした広域を対象に陸域雲水量を推定・同化し、データセットを作成することを目的としている。2019年度中に本システムをこれまでの対象地域とは異なる気候特性の地域へ適用し、その結果が十分な精度を示すことを確認できた。 また、本システムの対象地域を拡張するための基礎知識として、野外観測を行った結果、陸域雲水量推定に必要となる陸面表現の精度が明らかになっただけでなく、これまで想定していなかった、「陸面状態の不均一性を無視できる条件」の存在が見つかり、ある一定条件の下では、陸域の雲水量の推定が簡略化できることと、その理論的な根拠を初めて明らかにした。この成果の一部は国内学会誌に掲載され、一部は国際学術誌に投稿し、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
本システムが必要とする計算コストは比較的大きいため、広域にかつ高解像度で適用するには、膨大な計算機能力が必要である。しかし、2019年度までに得た「陸域雲水量推定のために必要な陸面表現精度」の情報を基に、雲水量推定精度を保ちつつ、可能な範囲で、陸面の表現を簡略化することで、広域への適用を可能とし、データセットを作成していく計画である。 また、可視・近赤外域の衛星データの利用も進める。ひまわり8号のデータと大気モデルの計算した大気プロファイルから、雲頂高度を簡易的に算出する手法を試行し、その結果を見て手法の改良や高度化を行っていく計画としている。
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Causes of Carryover |
2020年1月以降の出張キャンセルなどに伴い、旅費の支出が所要額より減少したため。 国際学術論文が受理され、2020年度に出版となるため、出版費やオープンアクセス代などに使用する計画である。
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Research Products
(4 results)