2019 Fiscal Year Research-status Report
制震装置を活用した付加減衰に基づく送電鉄塔の耐震性向上に関する研究
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19K23543
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
松本 将之 香川高等専門学校, 建設環境工学科, 助教 (50847407)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 送電鉄塔 / 地震応答解析 / 耐震性評価 / 付加減衰 / 制震装置 / 減衰性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,過去における送電施設の地震被害により,広域に亘る都市生活に甚大な被害が生じたとの地震被害の報告を踏まえ,送電鉄塔の耐震性評価,及び耐震性向上を検討することを目的としている.検討対象は,我が国で一般的に採用され,基幹線に位置する送電鉄塔を選定し,鉄塔への減衰付与の観点から高減衰化を図り,鉄塔の地震に対する安全性確保,及び耐震性向上について,解析的,且つ実験的に検討を進めている.本研究では,制震装置として振り子式の同調質量ダンパー(TMD: Tuned Mass Damper,以下,TMDと称す)を鉄塔へ適用することで,TMDの有効性について検討し,TMDの鉄塔実基への適用に向けた耐震性検討を実施する計画である. はじめに,2019年度は,主としてダンパーに必要とされる減衰性能に関して,解析的な検討を行う計画で研究を進めてきた.その結果,鉄塔が受ける荷重条件や鉄塔の支持に関する境界条件等の相違により,鉄塔の地震時挙動が異なり,個々の条件によって必要となる減衰性能に差異があることを確認した.現在,地震時に想定される荷重ケースや支持ケースを複数検討し,TMDの設置による応答低減効果について解析的な分析を継続し,多種の条件に対して最適なTMDの設置条件や性能条件を探索している.一方で,TMDの実基への設置を目指した実験的検討では,はじめに鋼材を用いた塔状構造物の自由振動実験の実施に向けて,検討対象のモデル構築や耐震性評価に関する計測内容等の検討を進めている.本検討は,今後において縦長の構造特性を有する鉄塔実基へTMDを適用するに当たり,TMDの塔状構造物への設置による振動特性の基本的把握とTMDの設置可能性に関する検討のために必要不可欠である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の検討内容に関しては,ダンパーの必要減衰性能の解析的検討として,TMDの質量比や同調比,剛性や材料非線形特性,設置数や設置箇所等の性能条件や設置条件をパラメトリックに変動させることにより,複数ケースの動的応答解析を行い,ダンパーに必要となる減衰性能を評価してきた.また,併せてより制震効果を発揮する諸条件を探索するため,想定される条件下での解析的検討を実施した.検討に際しては,まず地震工学・耐震工学に関する学術専門図書等を比較し,鉄塔の耐震性評価,及び耐震性能向上を解析的に検討する上で必要となる各種数値計算法の比較・検討を行った.その後,数値解析用のコンピュータ,及び汎用構造解析プログラムを有する解析ソフトウェアを用いて,解析的に鉄塔の耐震性評価を行った.更に,TMDによる鉄塔の耐震対策に関して,得られた知見を取りまとめ,所属学会にて成果の発表を行った. 現在は,ダンパーに必要となる減衰性能に関する解析的検討の途中段階にあり,当初予定していたダンパーの試設計と減衰性能評価(2019年度~2020年度)の検討に至っていない.計画当初に対して,研究推進の中で,検討を必要とする外力の追加や構造条件の追加に伴い,想定されるケースが増加したことによる解析ケースの増加により,検討期間が長期化している.また,解析的検討の一方で,塔状構造物の自由振動実験に向けた構造モデルの構築や計測事項に関する検討を同時並行で進めている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,まず,鋼材を用いた塔状構造物の自由振動実験を実施する予定である.これにより,塔状構造物の振動現象に関して把握する予定である.その後,ダンパーの試設計と減衰性能評価として,ダンパーを試設計し,その材料特性を実験的に確認する.また,試設計に基づいて試験体を製作し,香川高専所有の三次元振動台実験装置にて動的載荷試験を実施し,荷重-変位関係に基づく減衰性能を実験的に把握する計画である.その後,実験結果は,動的解析のモデル化に反映する.検討に当たり,はじめに,先のダンパーに必要とされる減衰性能を実現するような,数ケースのTMDの構造を試設計する.設計後,製作材料を用いて,試設計したダンパーを製作する.その後,製作したダンパーの動的載荷試験を実施し,要求する減衰性能と実験結果との比較を行う.また,実験結果を動的解析のモデル化に反映し,耐震性評価と耐震性向上の解析的検討を継続する.更に,TMDによる制震対策の実験的検証に関して,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う. その後,自由振動実験に基づくダンパーの減衰性能評価として,試設計したダンパーを模型鉄塔に装着し,上記実験装置により自由振動実験を実施する.ダンパーの有無の実験結果より,TMDによる減衰効果と等価な粘性減衰性能等を実験的に評価する予定である.はじめに,製作材料を用いて,比較検討用の鉄塔模型を製作する.製作後,模型鉄塔へTMDを設置しない場合(非制震)と,TMDを設置した場合(制震)で自由振動実験を行い,ダンパーによる制震効果について実験的に検証する.実験結果に基づき,ダンパーによる減衰効果と等価な粘性減衰性能等を評価する.更に,TMDの鉄塔への適用による実験的検証の結果について,得られた知見や結果を取りまとめ,成果の発表を行う予定である.
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Causes of Carryover |
今後は,試設計のダンパー,及び塔状構造物の自由振動実験に着手する予定である.鉄塔実基の部材接合部に設置可能なダンパーの形状について検討し,模擬したダンパーを試設計し,香川高専所有の振動実験装置にて動的載荷実験を行い,荷重-変位関係に基づくダンパーの減衰性能を実験的に確認する.その後,これらの実験結果を動的応答解析のモデル化に反映させ,ダンパーの実基への装着を想定した減衰性能評価に関する検討を行う予定である.更に,上記実験装置を用いて,鉄塔模型を製作し,鉄塔に試設計したダンパーを取り付けて振動実験を行い,ダンパーの有効性について実験的に検証する計画である. 従って,上記の研究計画を遂行するに当たり,試設計したダンパー,及び模型鉄塔の振動実験では,数ケースの模擬ダンパー製作,及び鉄塔関連模型の製作を行うため,ダンパーの製作材料,及び鉄塔関連模型の製作材料が必要である.また,振動実験用の計測機器が必要である.更に,鉄塔の耐震研究を行う上で,研究協力者との研究打合せや研究分野の情報収集,研究成果の発表(学会誌投稿,及び口頭発表)が必要である.このため,打合せや情報収集,成果発表のための研究資料の印刷や通信が必要となる.更に,ダンパー,及び鉄塔関連模型の振動実験に用いる資材運搬が必要である.
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