2019 Fiscal Year Research-status Report
高密度地震観測網を用いた首都圏高解像度3次元S波速度構造モデルの構築
Project/Area Number |
19K23544
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
二宮 啓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (40849923)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 表面波トモグラフィ / S波速度構造 / 地震波干渉法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高解像度の3次元S波速度構造を推定することは、 地震被害の予測や高精度な地震動シミュレーションを行う上で重要である。 特に地震発生時に大きな被害が予想される首都圏においてS波速度構造をより正確に把握することは、 地震防災のために急務である。 本研究では、首都圏に設置された高密度な地震観測網(MeSO-net)で観測された雑微動データに対して表面波トモグラフィを適用することで、首都圏の高解像度3次元S波速度構造モデルの構築を目指す。 まず初めに、MeSO-netで観測された波形記録から、観測点間を伝播する表面波を抽出した。これは、2観測点で観測された波形記録の相互相関を計算することで得られる。本研究では、鉛直成分の波形記録を用いて表面波を抽出した。次に、抽出した表面波の分散曲線を周波数領域で推定した。周波数領域で分散曲線を計算することで、短い観測点間距離のペアにおいて、より低周波数の位相速度が推定可能になる。最後に、推定した分散曲線を用いて表面波トモグラフィを適用することで、首都圏の3次元S波速度構造を推定した。得られたS波速度構造モデルでは、既存のS波速度構造モデル(鈴木、2002)と同様の傾向を得ることができた。一方で、鉛直成分から抽出した表面波は、低周波数(約0.2Hz以下)で高次モードが卓越しているため、基本モードを仮定した表面波トモグラフィでは解析可能な深度が限定的であった。この研究成果について、物理探査学会第140回学術講演会で発表し、優秀発表賞に選出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉛直成分の波形記録を用いるて、当初の計画よりも早く、3次元S波速度構造モデルの推定に至った。しかし、水平成分の波形記録も解析することで、より正確な速度構造モデルを推定し得ることがわかった。今後は水平成分の解析も行うため、進捗状況として「おおむね順調に進展している」とした。今後も解析手法を改善し,首都圏の高解像度3次元S波速度構造モデルの構築に向けて,研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
MeSO-netの水平成分の観測データから表面波を抽出する。鉛直成分の解析で開発した手法に水平成分の表面波を適用し、分散曲線の推定を行う。鉛直成分から推定した分散曲線と水平成分から推定した表面波の分散曲線を用いて表面波トモグラフィを行う。これにより、より高解像度の3次元S波速度構造を推定する。また、高次モードの抽出や異方性モデルの推定にも取り組む。
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Causes of Carryover |
当該年度は既にダウンロードしていたMeSO-netデータ(1ヶ月分)を使用し、解析を行ったため、ほとんど経費がかからなかった。十分なシグナルを得るためにどの程度追加のデータが必要か検討し、今後は季節由来のノイズの偏りを軽減するために、約1~2年分のMeSO-netデータを使用する予定である。これに伴い、当初の予定通り外付けHDDを多数購入する必要がある。また、膨大なデータを扱うため、解析用PC・解析ソフトウェアを購入する予定である。
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