2020 Fiscal Year Research-status Report
町並み保全地域における自主規範の実態把握及び調整システム構築・運用指針の作成
Project/Area Number |
19K23548
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
石山 千代 國學院大學, 研究開発推進機構, 准教授 (30847984)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 人口減少時代の集落景観マネジメント / 空き家増加リスク / Uターン・Iターンの受け入れ / 新たな生業の受け入れ / 規範運用の丁寧な見直し / 地域の理念と規範の統合、共有、調整の仕組み / 自主財源確保・駐車場有料化 / 町並み保存からまちづくりへ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、重伝建選定後に自主規範を制定した地域(自主規範後行地域)である美山北集落と熊川宿を対象として、文献調査とオンラインや電話でのインタビュー調査によって自主規範を軸とした調整システム構築過程を明らかにした。 前者では、集落内での具体的な土地売買や利用に関する事案が契機となり、(1)目指すべき理念と規範の明示・共有と(2)景観保存と地域経済の両立を目指す体制の構築が行われ、やがて人口・入込客数の減少と空き家が顕在化する中で(3)U・Iターン者や新たな生業の受入れとそれに伴う規範運用の丁寧な見直し(4)地域の理念と規範の統合、共有と調整の仕組み(5)地域課題とリスクに備えた自主財源確保に至った展開を明らかにし、集落景観を観光資源とする地域の人口減少時代のマネジメントに関する論稿として観光研究学会に発表した。 後者では、重伝建選定の5年前に一度自主規範が検討されたものの制定に至らず、約10年後、重伝建とデザインガイドによって街道沿いの建築物の修理・修景と各種景観整備が進捗した段階で、法制度やハード整備では対応が困難な無形の事項へ対応していくため、「町並み保存」から「まちづくり」へと広がっていく転換点に自主規範の検討が住民主導で再開され、3年にわたる検討を重ね、制定に至っていた。これがベースとなって、その後、U・Iターン者と新たな生業の受入れに伴って、地域の理念と規範の統合、共有と調整の仕組みも整えられてきた過程も詳細に明らかとなり、現在取り纏め中である。 上記と並行して、多雪地域の旧商家町ならではの規範が根付く黒石における歴史的空間の保全と活用による街区再編に関する論稿、自主規範先行地域として継続的な調査を実施している妻籠宿における昨今の広域的課題への対応に関する論稿を取り纏めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染拡大に伴い、2020年度に集中的に実施を予定していた現地調査は行うことができなかったが、研究調査対象地域の方々の多大なるご理解とご協力のおかげで、オンラインツールや電話等の活用によって、自主規範後行地域における自主規範を軸とした調整システム構築過程と内容について当初想定以上に詳細に解明することができ、人口減少時代における集落景観マネジメントについての考察を深めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、わが国の町並み保全地域における自主規範制定・運用に関わる全体像と個別事例双方について研究の精度を高めた上で、空間的・社会的条件の相違を踏まえた比較分析を行い、わが国の町並み保全地域における自主規範を軸とした空間的・社会的調整システム構築・運用指針を作成し、学術論文及び図書等の執筆を目指す。 ただし、COVID-19の最新状況及び対象地域が置かれている状況を踏まえ、安全かつ適切な方法を都度慎重に検討しながら推進する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大により出張もアルバイト作業依頼も行うことができなかったため。 オンライン及び文献調査で実施できることは一定程度終えたので、仕上げの年となる次年度は、感染拡大が落ち着いたタイミングで効率的かつ安全に現地調査が実施できるように準備をする。ただし、COVID-19の最新状況及び対象地域が置かれている状況と意向を尊重する。そのため、オンラインツールの更なる活用方策も追究し続ける。
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