2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23549
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小松 真吾 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60845618)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 鋼構造 / NCブレース架構 / 弾性ひずみエネルギー吸収 / ブレース配置 / 静的載荷実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は,これまでにNCブレースの有する弾性ひずみエネルギー吸収という減衰機構に基づいて発生頻度が比較的高い中小地震時の建物応答低減が可能であることを示してきた.本研究の1年目は,この新たな減衰機構に基づく制振設計法を構築するための中核となるNCブレース架構の基本的特性を明らかにすることを目的としている.まず,制振構造への適用を見据えた変形増大抑制型のNCブレース配置を提案し,これを含む各NCブレース架構の地震水平力に対する抵抗機構を詳細に検討した.また,弾性ひずみエネルギー吸収量の定式化を行った.詳細を以下に述べる. 静的載荷実験試験体のブレース配置は,X型,Z型,非対称Z型,および変形増大抑制型の4種であり,それぞれ通常架構との比較のためブレース初期張力を導入して載荷による弾性ひずみエネルギー吸収を起こさない場合も実験した.また,各ブレース配置でブレース軸径を小・中・大と3種類変化させて,弾性ひずみエネルギー吸収量評価式の妥当性をそれぞれで検証した. 実験結果から,ブレース配置ごとの抵抗機構の違いから吸収できる弾性ひずみエネルギーには差があること,ブレース軸径が大きい,すなわち架構剛性に対するブレース剛性の比が大きいほどエネルギー吸収効率が高まることを確認し,それに基づいて最大荷重に対する弾性ひずみエネルギー吸収量の評価式を作成した.また,変形増大抑制型ブレース配置では,弾性ひずみエネルギー吸収と一方向漸増特性による捩り変形の大幅な低減を確認し,制振構造への展開が期待できることも示した.作成した評価式は,このような実験結果の傾向も良好に捉えていた.以上のように,2年目に実施予定である等価粘性減衰による評価法作成に繋がる重要な成果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静的載荷実験試験体は,当初新たに設計・製作することを計画していたが,既存試験体にガセットプレートを新たに溶接加工で増設することで,本研究のブレース配置に対応する計画に変更した.その結果,試験体の設計・製作期間を大幅に短縮でき,当初計画から実験変数を増やしたものの全ての静的載荷実験を実施することができた. また,振動台実験試験体の設計や,振動台実験後に行うNCブレース架構の時刻歴応答解析を一部先行実施している. 以上の理由より,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,まず振動台試験体を設計・製作して,試験体への入力方向やNCブレース配置を実験変数として地震波加振実験を実施する.加振により弾性ひずみエネルギー吸収を起こさないブレース初期張力を導入した試験体との比較により,これまで時刻歴応答解析でしか検討できていなかった弾性ひずみエネルギー吸収による地震応答低減効果を実証する.また,この実験結果において,各NCブレース架構の荷重変形関係から等価粘性減衰定数を決定する方法を構築し,弾性ひずみエネルギー吸収量と地震応答低減効果を結びつける. 次に,建物固有周期,建物減衰,ブレース配置,ブレース剛性比,入力地震動といったパラメータを広範囲で様々に変化させたNCブレース架構の時刻歴応答解析を行う.時刻歴解析結果を前述した等価粘性減衰定数による応答評価法で予測し,妥当性および応答予測精度を検証する. 最後に,等価粘性減衰定数の評価法を軸にして,想定する地震入力に対して,目標とする建物の最大荷重や最大変形を指定し,それを満たすようNCブレースの詳細を決定する性能指定型の制振設計法を構築する.新しい減衰機構によって構造物の設計が合理的に行えることを示す.
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Causes of Carryover |
静的載荷実験試験体を新たに製作するのではなく既存試験体にガセットプレートを増設して製作したため,材料費や製作費が削減され次年度使用額が生じた.ただし,少額であるので振動台実験の消耗品に使用する計画である.
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