2019 Fiscal Year Research-status Report
Individuality and Cooperation of Co-housing Projects in social housing
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19K23550
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
白石 レイ 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (20847321)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | People's Plan / 参加型設計 / 参加型社会住宅 / 集団移転 / 既存コミュニティ / コモン・スペース / 計画プロセス / 設計ワークショップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、公的資源の乏しい途上国において、コミュニティ参加により質の高い社会住宅の量的計画を実践する先進事例People's Planに着目する。本研究は、People's Plan の実践状況に関する政策評価を行うことで、国内における基礎的な知見と、現地における実践的な知見を得ることを目的とする。本研究で得られた成果は、国内のこれからの社会住宅計画の方針を議論する際に最も参照すべき海外実践例として重要な基礎的知見となると考えられる。 本研究ではコーポラティブ型社会住宅供給において、「(1)既存コミュニティを尊重する事業プロセスは計画個別性を生み計画の質を向上させるのか」、「(2)新たに組織されたコミュニティによる個々の自律的な計画は互いに連動し都市をつくる量的住宅計画を可能にするのか。」という2つの問いを設定している。これらの問いに基づいた調査分析を行い、People's Plan の政策評価、課題抽出を行う。 初年度、問い(1)に関し、People's Plan 特別予算の配分記録および政府機関へのインタビュー調査から住宅を入手したコミュニティの数と参加の程度を明らかにした。また、当初People's Plan が想定した程度の住民参加が行われたと判断できた個々のコミュニティについて、住民へのインタビュー調査と設計図面から、計画プロセスと住空間の計画個別性の有無・特徴を明らかにした。具体的には、既往研究において政府によるガイドブックを元に作成したプロセス表に沿って、年月およびステークホルダーのサポート内容についてコミュニティリーダーに確認し、分析を行った。また、各コミュニティがもつ住棟デザイン案について、設計プロセスでの協議内容を同じくリーダーへ確認し、建築図面から空間的な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた問い(1)に関する調査をおおむね計画通り行うことができたため。 住宅を入手したコミュニティの数と参加の程度を明らかにしたところ、全体の2割程度しか、当初People's Plan が想定した程度の住民参加が行われたと判断できる事業がないことが分かった。つまり、その他8割については従来どおりの居住環境を考慮しない郊外でのマス・ハウジングが行われており、住宅予算500億ペソのうち大部分は時間のかかるPeople's Planに使用されていないことが判明した。 また、それら、当初People's Plan が想定した程度の住民参加が行われたと判断できた2割のコミュニティについて、計画プロセスと住空間の計画個別性の有無・特徴を明らかにしたところ、住民は計画プロセスにおいて土地取得や融資認可のために割く労力が大きく、住宅デザインへのWS等を通した積極的な参加はほとんど見られないこと、一方でいくつかの事例では建築家の提案によりコミュニティのための新しい共有空間が計画されていることが明らかになった。また、従来は画一的な住宅ばかりが供給されていたことを考えると、住宅地ごとに様々な住棟デザインが実現していることは評価すべきであると考察した。 また、フィリピンの公営住宅の敷地選定に有用となる交通に関する調査、また国内の公営住宅の調査等も、関連テーマとして研究を行なった。 ほとんど全ての調査計画は実行でき、一部、年度末に予定していたものの新型コロナウイルスによる海外渡航制限により実施できなかった調査があるが、計画の9割以上は予定どおり実施済みであるため、「おおむね」順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、計画どおり初年度に続いて問い(2)に関する調査を行う。問い(1)で調査対象としたコミュニティについて、他のコミュニティとの交流に関する住民へのインタビュー調査を行い、個々の計画の連動性の有無・特徴を明らかにする。具体的には、現地へ渡航し、いくつの他のコミュニティと交流しているか、また何について話しているのか、についてコミュニティリーダーへ確認し、コミュニティどうしのネットワークが広がる契機について分析を行う。 さらに、問い1、問い2についての調査をまとめ、最終成果として査読付き論文の投稿を行う。 なお、令和2年度新型コロナウイルスの影響で年度前半での現地渡航は難しくなることも考えられるので、前半に可能な限り遠隔での調査を進めながら、年度後半に現地にて短期集中型の調査を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
令和2年3月、新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、海外渡航自粛などの社会情勢を鑑みて3月に予定していた現地調査を取りやめたため。収束時期が見通せないため、令和2年度は文献調査等を中心に研究を進める。使用計画としては、現地研究者との打ち合わせや遠隔調査のために必要となる機器購入、文献資料の購入等による物品費の計上、国内の研究者との意見交換のための国内出張費の計上を予定している。
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Research Products
(9 results)