2019 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation by residents for aging society scenarios in suburban areas from viewpoints of walkability
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19K23558
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
加登 遼 武庫川女子大学, 生活美学研究所, 嘱託助手 (50849396)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ウォーカビリティ / オールドニュータウン / シナリオ分析 / 居住者評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウォーカビリティの観点から、オールドニュータウンの高齢社会シナリオに対する居住者評価を解明することである。このオールドニュータウンとは、高度経済成長期に、大都市圏周辺地域の丘陵地に、大量かつ大規模に開発された郊外住宅地である。その大半は高齢化率30%を超えているため、健康で自立的な生活環境の維持する必要がある。 そこで本研究は、研究手法としてトランスフォーマティブ・シナリオ・プランニングを採用する。そして本研究は、シナリオ・プランニングを実施する研究体制を構築して、オールドニュータウンにおける高齢社会シナリオを作成して、質問紙調査による高齢社会シナリオに対する居住者評価を、ウォーカビリティの観点から解明する。このウォーカビリティとは、居住者の歩行を促進する生活環境を測る概念であり、健康で自立的な生活環境を把握するための重要な評価指標である。その居住者評価を解明することで、居住者に共感を得て、実現可能性の高い高齢社会シナリオを検討することができる。 そこで本研究は、2019年度にオールドニュータウンにおける高齢社会シナリオを分析した。そして、2020年度に質問紙調査による高齢社会シナリオに対する居住者評価を解明する。2019年度の研究成果として、研究①「ウォーカビリティ指標によるシナリオ評価」と、研究②「研究①で分析したシナリオの実現に向けたデザイン」について研究した。具体的に、大都市圏周辺地域は、コンパクトシティシナリオのオルタナティブとして評価した空地活用型シナリオの実現に向けて、部分として拡散的に立地する空地を、都市全体で連鎖的にデザインすることで、近隣環境での歩行による外出行動が促進される可能性を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、研究①「ウォーカビリティ指標によるシナリオ評価」と、研究②「研究①で分析したシナリオの実現に向けたデザイン」について解明した。具体的に、前者の研究①「ウォーカビリティ指標によるシナリオ評価」として、北大阪都市計画区域の茨木市を事例に、「空地活用型シナリオ・郊外撤退型シナリオ・多極集約型シナリオ・一極集中型シナリオ」という4つの将来シナリオをシミュレーションして、申請者が開発したウォーカビリティ指標を用いて評価した。その結果、大都市圏周辺地域では、現在の都市計画で推奨されているコンパクトシティに立脚した多極集約型シナリオのオルタナティブとして、空地活用型シナリオを評価するできることを解明した。この成果は、日本建築学会計画系論文集85(767)に掲載された。 後者の研究②「研究①で分析したシナリオの実現に向けたデザイン」として、前者の研究で評価した空地活用型シナリオに向けた、具体的なウォーカブルデザインについて、北大阪都市計画区域の茨木市で実施された実際のプロジェクトを参考に調査した。その結果、居住者の主体的な活動を中心としたウォーカブルデザインにより、部分として拡散的に立地する空地が、都市全体で連鎖的にデザインされることで、居住者同士の社会的交流が生まれて、近隣環境での歩行による外出行動が促進される可能性を解明した。この成果は、日本都市計画学会関西支部だよりVol.34に掲載された。 以上より、研究成果が確実に結実している。また、2019年度の研究成果が評価されて、2019年度後期より、大阪府茨木市のオールドニュータウンを対象に、トランスフォーマティブ・シナリオ・プランニングを進めている。したがって、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度の研究成果を踏まえて、高齢社会シナリオに対する居住者評価を、質問紙調査により解明する予定である。なお、2019年度後期より、本研究が事例として研究している大阪府茨木市のオールドニュータウンを対象に、街づくり協議会・茨木市役所・近隣の大学と連携して、研究体制を構築している。また、事前調査として、街づくり協議会の方々に、半構造化インタビュー調査を行っている。2020年度も継続して半構造化インタビュー調査を行い、2019年度の研究成果も踏まえて、オールドニュータウンの高齢社会に向けたシナリオ・マトリクスを作成する。その後、高齢社会シナリオに対する居住者評価を分析する。その手法として、居住者150名程度を対象に、生活行動調査とシナリオ評価で構成される調査票調査を行う。その調査結果に対して、曖昧なシナリオ評価を定量的に評価できる区間AHP法で分析することで、居住者評価の高い高齢社会シナリオを解明する。 ただし、COVID-19の影響により、2020年2月末から、半構造化インタビュー調査をストップしている(2020年4月末時点)。休止期間によっては、調査票調査の方法を再検討する必要性もある。COVID-19の影響により社会が大きく変化している時代だからこそ、オールドニュータウンが進むべき高齢社会シナリオを解明することを通して社会に貢献できるように、丁寧に研究を進める。
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Causes of Carryover |
2019年度、半構造化インタビュー調査に協力頂いた方への謝金のために、人件費・謝金を計上していた。しかし、COVID-19の影響により、2020年2月末から、謝金を伴う半構造化インタビュー調査をストップしている(2020年4月末時点)。それが、次年度使用額が生じた理由である。 2020年度、半構造化インタビュー調査を再開次第、調査票調査と合わせて、人件費・謝金として使用する計画である。
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