2019 Fiscal Year Research-status Report
A Basic Study on the Development of Principles for Conservation adoptable to Modern Architectural Heritage
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19K23564
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
金井 健 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 室長 (90359448)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 文化財保護行政 / 建造物保存 / 近現代建築 / 保存修理 / 保存活用計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、文化財としての近現代建造物の位置づけに関して、主に行政制度上の施策や言説等の変遷を中心に研究し、その成果を論文「近現代建造物の保存理念の展開に関する基礎的研究(その1):文化財保護法下における文化財概念の創出と変容」にまとめた。また、近現代建造物に関する文献資料等を収集するとともに、近現代建造物の改修事例に関する現地調査を進めた。このほか、近現代建造物等の保存に関するシンポジウム等に参加した。 1. 論文は、研究実施計画に示した「1. 物理的に保存すべき範囲や対象の考え方の整理」にあたる部分の考察であり、5月に日本建築学会計画系論文集に投稿し、現在、同学会において審査中である。 2. 収集を進めている文献資料等は、研究の基礎資料として必要となる近現代建造物に関する論考等の文献及び近年(過去20年程度)の近現代建造物の改修を掲載した建築専門誌等である。収集した文献をもとに、本年度から近現代建造物の改修等の具体事例のリスト化を進めるとともに、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)、旧大分県立図書館(大分市アートプラザ)、髙島屋東別館(シタディーンなんば大阪)、旧第九師団司令部庁舎及び旧金沢偕行社(国立工芸館)について改修工事等関係者へのインタビューを含む現地調査を行った。 3. 12月6日に北海道大学で開催されたDOCOMOMOシンポジウム「近現代建築の保存と継承」、12月22日に京都工芸繊維大学で開催された保存再生学シンポジウム「歴史的建築物の保存活用を担う人材と組織について考える」に参加し、近現代建造物の保存や活用に関する情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画で文化財としての近現代建造物の取扱いにおける課題に掲げた、 1. 物理的に保存すべき範囲や対象の考え方の整理、 2. 価値の向上に資する改造の在り方の検討、 3. 従来の方法の延長線上に位置付けうる修理方法の抽出、 のうち、本年度は1.を概ね完了することができた。また、2. についても近年の近現代建造物の改修等の事例を収集し、検討の基礎資料となる情報のリスト化を進めるとともに、特徴的な改修事例についての現地調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 近現代建造物の改修の具体事例の情報収集を継続し、引き続きリスト化を進めるとともに、文化財的価値に対するアプローチ(対処方法)に着目して分類し、近現代建造物の改修の方法と文化財建造物修理の方法との可換性の検証を行う。 2. 近現代建造物の改修等にみられる文化財的価値の取り扱われ方と文化財建造物修理で行われる価値評価に関する手続きとの比較検討を通じて、近現代建造物に求められる現代的機能の維持または更新のための措置を、文化財保存の一部として受容しうる保護の枠組みの提案を行う。
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