2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating mechanism of perfect wetting behavior of liquid indium on molybdenum oxide films
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19K23573
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勝部 涼司 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (10839947)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 界面反応 / 濡れ性 / 化学熱力学 / 化合物半導体 / 薄膜太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、研究代表者が見出した「液体Inは表面張力が大きいにも関わらず、MoOx上で完全濡れ状態となることがある」という現象のメカニズムを解明することで、In基化合物成膜プロセスの基盤技術となる、液体Inの完全濡れ状態を実現する普遍的な条件を提示することである。本年度はまず、スパッタリングによりソーダライムガラス(SLG)基板上にMoを成膜し、一部の試料上にはさらに真空蒸着によりMoO2やMoO3を成膜することで, 種々の表面酸化状態を有するMo系薄膜を作製した。これらの上にInを蒸着した試料を真空下500℃で熱処理することで、各試料中におけるInの濡れ性を評価した。その結果、MoO3蒸着膜上では再現性良く液体Inは完全濡れ状態となり、この時InとMoO3との反応により界面にIn2O3の高配向膜が生成しているしていることが明らかになった。それ以外の試料中ではInは脱濡れしたが、それぞれの熱処理後のInアイランドのサイズに違いがあることが分かった。そのMo系薄膜表面の酸素量やXRD測定結果との相関を整理すると、酸素量少ないほど、Inの液滴サイズは小さく、In2O3の生成量は少ないことが分かった。これらの結果は、化学ポテンシャル図を利用した熱力学的考察とも定性的に一致する。以上のように、界面に生成したIn2O3の存在量や配向状態が、液体Inの濡れ性に直接影響する因子であることが示唆された。今後、この知見を基に種々のIn/In2O3モデル試料に対する実験を行うことで、完全濡れのより詳細なメカニズム解明が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、酸化状態を制御したMo下地膜を作製することで、In成膜・熱処理後の表面・界面状態の再現性の良い実験条件の構築を達成した。その結果、反応生成物であるIn2O3の存在状態が本系の濡れ現象の鍵であることを見出しつつあり、次年度の完全濡れ状態実現のメカニズム解明が期待できる。 また、当初懸念されていたMoO3蒸着膜上における液体Inの完全濡れが再現しない問題については、蒸着中の酸素の脱離量の違いに起因することをXPS測定により明らかにした。この結果に基づき、蒸着条件の改善や、本研究で導入したUV/O3処理装置を用いることで再現性の問題を解決し、本研究課題を速やかに遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り熱処理後のIn/Mo系下地膜の断面観察を行うことに。さらに、本年度に見出したIn2O3の配向が液体Inの濡れ性に影響している可能性を検証するため、種々の配向・結晶性を有するIn2O3膜をスパッタリングにより成膜し、その上における液体Inの濡れ性を調査する。これらによりメカニズム解明が速やかに進行すれば、その結果を応用したリン化や硫化、セレン化による化合物成膜の実証研究を展開する。
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