2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代の材料応用へ向けたタンパク質結晶の転位論に基づく解析
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19K23579
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鈴木 凌 横浜市立大学, 理学部, 助教 (70846708)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | グルコースイソメラーゼ結晶 / 高品質タンパク質結晶 / X線トポグラフィ / 転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質結晶はこれまでの一般的な材料には持ち合わせていない「結晶水を他の物質と置換できる」といった類稀なる特徴を有しており、次世代の結晶性生体材料として注目されている。しかし、「脆く壊れやすい」という弱点があり、応用研究への発展やその実用化には至っていない。実用化に向けたファーストステップとして、まず結晶の力学的性質を理解する必要がある。しかしながら、一般の材料に比べてタンパク質結晶は育成時に結晶欠陥が多く入ってしまい、力学的性質を司る転位の挙動を解明することが困難であった。 2019年度は完全性が極めて高くモデルタンパク質結晶として有望視されるグルコースイソメラーゼ結晶(GI結晶)の育成方法の確立と力学試験への応用を行った。残念なことに、GIの試薬の販売が終了してしまい原料の調達が困難になってしまった。一方、GI自体は工業的には糖を異性化させる酵素として使用されているため、食品メーカーに協力を依頼し、試薬グレードではないものの目的のGIの調達が可能となった。試薬グレードではないことから、結晶化にとっては多量の不純物が多く含まれており、試薬を使用していた当時の結晶化条件で結晶を得ることが出来なかった。そこで、工業用GIの精製と結晶化条件の見直しに取り組んだ。半年の時間を要したが、これまでと同様なGI結晶を作製出来る条件を見出すことが出来た。さらに、放射光X線トポグラフィによる結晶性の評価を行ったところ、試薬グレードで育成されていたGI結晶と同等な品質を示した。具体的には完全結晶由来の干渉縞がX線トポグラフ像から観察された。しかしながら、無転位化に成功していた試薬グレード育成のGI結晶に対し、予期しない成長転位も確認された。これは、精製時に取り除けていない不純物が原因であると考えている。無転位結晶も得られており、それらを用いたインデンテーションのその場観察は測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はGI試薬を使用したGI結晶の作製を計画していたものの、工業用GIといった純度の低い状態から出発することになり、期間前半は結晶化条件の見直しに非常に時間がかかった。しかし、結晶が得られるようになってからは、放射光X線トポグラフィによる力学試験のその場観察の成功まで繋ぐことが出来たので、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶化条件の確立には成功してきているものの、完全無転位化には至っていないため、さらなる精製条件や結晶化条件を検討する。一方で、無転位結晶として得られているものもあるので、それらを使用したX線トポグラフィによる力学試験のその場観察を進める。2019年度の実験では縫い針を利用したプレ測定であったため、今後は応力センサーなどを実装し、変形の定量化を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は見積もっていた額よりも試薬を購入しなかったためである。2020年度はさらに試料数が必要となることから、合算して必要な試薬代として使用する。
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