2020 Fiscal Year Annual Research Report
次世代の材料応用へ向けたタンパク質結晶の転位論に基づく解析
Project/Area Number |
19K23579
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
鈴木 凌 横浜市立大学, 理学部, 助教 (70846708)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | グルコースイソメラーゼ結晶 / 高品質タンパク質結晶 / X線トポグラフィ / 転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質結晶はこれまでの一般的な材料には持ち合わせていない「結晶水を他の物質と置換できる」といった類稀なる特徴を有しており、次世代の結晶性生体材料として注目されている。しかし、「脆く壊れやすい」という弱点があり、応用研究への発展やその実用化には至っていない。実用化に向けたファーストステップとして、まず結晶の力学的性質を理解する必要がある。しかしながら、一般の材料に比べてタンパク質結晶は育成時に結晶欠陥が多く入ってしまい、力学的性質を司る転位の挙動を解明することが困難であった。 2020年度は2019年度に作製に成功した無転位で高品質なGI結晶を用いて変形のその場観察を行った。自作の応力負荷装置を放射光施設の実験系に組み込み、結晶に対して応力を負荷しながらその様子をⅩ線トポグラフィにより観察した。なお、Ⅹ線トポグラフ像の撮影にはX線CCDカメラを使用し、応力負荷の圧子として市販の縫い針を用いた。結果として、圧子によって応力が発生した箇所からひずみ由来のコントラストが入る様子が明瞭に観察された。また、Ⅹ線CCDカメラよりも高分解能で観察が可能なX線フィルムを使用したトポグラフ像観察から、応力負荷した直下において、格子欠陥に対応した回折像をとらえることに成功した。さらに、回折ベクトルを変化させることでコントラストの変化が明瞭に観察されたことから、格子欠陥由来であることが裏付けられた。このことから、脆く壊れやすいとうたわれるタンパク質の結晶であっても、金属結晶のように欠陥由来の塑性変形が生じることが実証された。
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