2019 Fiscal Year Research-status Report
網羅的環境中微粒子分析法の創出とエクスポソーム解析への展開
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19K23587
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
嶋田 泰佑 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00850140)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | エクスポソーム解析 / 粒子状物質 / イオン選択性電極 / 電位測定 / 多項目検出 / 界面活性剤 / イオン電流計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、イオン選択性電極を用いた電位測定と界面活性剤を添加した導電性溶液内でのイオン電流計測による、水溶性・非水溶性粒子状物質分析法を創出した。 水溶性粒子状物質成分は溶液中で水和してイオンとなるため、これらイオンの検出のために、マイクロ流路内にイオン選択性電極を組み込んだデバイスを開発した。本年度では、硝酸イオン・アンモニウムイオン・ナトリウムイオンに対して選択的な分子を含む高分子膜(感応膜)を電極上に塗布し、イオン選択性電極を作製した。また、高分子膜のみを電極上に塗布することで、イオン非応答性の参照電極も作製し、これらの電極をマイクロ流路内に組み込み、電位測定に基づいた複数種イオンの同時検出を実現した。さらに、本手法を用いて、粒子状物質の実試料(都市大気粉塵、国立環境研究所)から抽出したイオン成分を分析したところ、既存技術(イオンクロマトグラフィー)と同等の結果が得られることを確認した。 非水溶性粒子状物質では、界面活性剤を利用したイオン電流計測により、疎水性微粒子モデルのカーボン微粒子を分析した。これまでに、研究代表者は、微細孔を用いたイオン電流計測による微粒子分析技術を開発してきたが、粒子状物質に含まれる分散性の低い疎水性微粒子の計測が困難であった。そこで本研究課題では、界面活性剤による分散性向上を利用したイオン電流計測法を開発し、疎水性微粒子のサイズ・濃度を分析した。界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いており、その最適化濃度にてモデルのカーボン微粒子(サイズ:1-2 μm)を分散させることで検出した。本手法による微粒子のサイズ・濃度分析が既存技術(サイズ:電子顕微鏡観察、濃度:光学顕微鏡観察)の結果と相関することを実証しており、疎水性微小粒子状物質分析法の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度では、当初の計画通り、(1)水溶性成分分析のためのイオン選択性電極の作製とアレイ化による複数種イオンの同時分析、および、(2)界面活性剤を添加した導電性溶液内でのイオン電流計測による非水溶性粒子状物質分析を達成した。 (1)の課題に関しては、イオン選択性電極・参照電極の開発とそれらをマイクロ流路内に作製したデバイスを開発し、複数種イオンの同時分析に成功した。高分子膜のみとイオン感応膜を電極上へ塗布することで、それぞれ参照電極とイオン選択性電極を作製した。エレクトロメータを用いた電位測定に基づいて、参照電極に対するイオンイオン選択性電極の電位応答を評価することで、感度を最適化した。粒子状物質の含有成分である硝酸イオンとアンモニウムイオン、ナトリウムイオンに対する各イオン選択性電極を並列化して作製し、複数種の水溶性微粒子由来イオン成分を同時分析した。さらに、令和二年度にて実施予定であった、本手法を用いた実試料由来の水溶性成分分析を達成した。粒子状物質の実試料(都市大気粉塵、国立環境研究所)から抽出したイオン成分を分析し、既存技術と相関する結果が得られた。 非水溶性粒子状物質では、界面活性剤を利用した疎水性微粒子の分散とイオン電流計測による分散微粒子の分析を達成した。界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を選定し、イオン電流計測のための導電性溶液に添加した。添加SDS濃度は、モデル粒子状物質のカーボン微粒子(サイズ:1-2 μm)の検出粒子数に基づいて、最適化し、本手法による微粒子のサイズ・濃度分析が既存技術と相関する結果が得られた。 以上の理由より、「(1) 当初の計画以上に進展している」に該当すると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で実施した、界面活性剤を利用したイオン電流計測では、疎水性微粒子の分析も可能であることが示されたが、環境中微粒子サイズは多岐にわたるため、網羅的分析に向けては、ワイドレンジの微粒子検出が必要になる。しかし、微細孔を用いたイオン電流計測では、細孔サイズによる制限のために、ワイドレンジでの微粒子検出は困難である。そこで、令和二年度では、分離機構を組み込み、その下流に分離粒子サイズに適した複数の微細孔を作製することで、ワイドレンジの微粒子分析を実現する。具体的な分離機構としては誘電泳動を採用し、櫛形状の電極を作製して交流電圧を印加することで、サイズに基づいた微粒子を分離する。櫛形電極の形状と印加交流電圧を最適化し、狙ったサイズを閾値として、微粒子を分離する。下流の複数微細孔では、細孔サイズ・形状の設計に基づいて、分離微粒子が通過した微細孔を追跡できるようにする。以上により、ワイドレンジでの微粒子検出を実現する。 さらに、これらの機構と濃縮捕集、および、イオン成分分析機構を融合することで、超高感度での環境中微粒子センサを創出する。その際、各要素技術間における分析法としてのギャップ(流量、分析用溶液)を最適化する。さらに、本センサをエクスポソーム解析へと展開し、個人を取り巻く微粒子の時間的・空間的変化を追跡する。
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