2020 Fiscal Year Annual Research Report
スピン渦度結合を用いた反強磁性スピン注入技術の開発
Project/Area Number |
19K23588
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山野井 一人 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20847777)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピンダイナミクス / 反強磁性 / スピン注入 / 磁化相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年注目を集めている巨視的な回転運動と電子スピンの結合であるスピン渦度結合を反強磁性金属に適用することで、反強磁性金属への非熱的スピン流生成を実現することである。 本年度は昨年度に実現した成膜レートや熱処理条件の最適化によって結晶性の高いDy 薄膜を用いて、Dy 薄膜へのスピン注入実験を実施した。実験当初は、表面弾性波デバイス上にDy 薄膜を成膜した素子を作製し、スピン渦度結合によるDy 薄膜へのスピン注入を試みたが、Dy 薄膜が重希土類金属であることに加えて、実現した高結晶化度Dy が50 nm という比較的高膜厚などの理由から、Dy 薄膜を伝搬した表面弾性波の信号強度が著しく低減してしまった。この解決策として、高い結晶性を維持したDy の更なる薄膜化を試みた。また、その実験と並行して、非接触にスピン注入を可能とするスピンポンピング実験を用いたDy 薄膜へのスピン注入実験も試みた。具体的には、Py(ニッケルと鉄の合金) とDy 薄膜を接合した素子を作製し、Py の磁化歳差運動によって、Dy 薄膜にスピン流を注入し、Dy 薄膜のスピン吸収効果の温度依存性を評価した。得られたDy 薄膜のスピン吸収効果は、強磁性Dy に比べて反強磁性Dy にて100 倍以上抑制されていることが分かった。今回得られた結果をDy 薄膜内でのスピンバックフローモデルを考慮すると、反強磁性Dy 薄膜において、100 nm を超える長距離なスピン輸送が生じている可能性を示唆しており、反強磁性Dy を用いたスピントロニクス分野への応用の知見が得られた。 本研究で得られた成果は、査読付き論文へ投稿中である。
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Research Products
(8 results)