2019 Fiscal Year Research-status Report
Observation of spin dynamics by time-resolved coherent soft x-ray diffraction imaging
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19K23590
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
石井 祐太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 博士研究員 (40847232)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | X線顕微鏡 / コヒーレントX線 / スピンダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、コヒーレント軟X線時分解磁気イメージング手法の確立し、これにより、磁性体中に誘起されるスピンダイナミクスを観測し、その微視的機構解明を目指している。マグノンに代表されるような磁性体中のスピンダイナミクスの観測は、これまで電気測定等のマクロ測定や中性子非弾性散乱等の逆空間上での測定が行われてきた。一方で、このようなスピンダイナミクスを直接実空間で観測する手法は確立していない。我々の研究では、波面の揃ったコヒーレント軟X線を利用して時分解X線回折磁気イメージングを行うことで、実空間上でスピンダイナミクスの微視的機構を解明することを目標としている。 令和1年度では、国内放射光施設PhotonFactoryにおいて新たにコヒーレント軟X線回折顕微鏡の立ち上げを行った。この軟X線顕微鏡は、インラインホログラフィーの技術を用いることで、実像から逆空間像へとスケールを変えながら試料のイメージ像を得ることができる。実際に、我々は数十ナノメートルから数マイクロメートル領域の構造物の観測に成功した。またこれを用いて、光が渦状の軌道を描く光渦のイメージング等にも成功し、新たなイメージング技術へと繋がることが期待される。 その一方で、スピンダイナミクスを観測する磁性体薄膜試料を、スパッタ装置を用いて作製した。検討の結果、SiNメンブレン基盤上にCo/SiO2薄膜を蒸着することとし、条件を詰めることで作製に成功した。またマイクロ波の導入のためには、薄膜上に金属端子を設置する必要があるため、その設計も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和1年度では、コヒーレント軟X線回折顕微鏡の立ち上げや、ACスピン流の測定用の試料作製を行った。軟X線顕微鏡の立ち上げでは、実際にインラインホログラフィーのイメージ像を得ることに成功し、軟X線顕微鏡の立ち上げは概ね完了した。この装置を用いて、メゾスコピック領域の構造物のイメージ像を、実像から逆空間像へとスケールを変えながら得ることに成功した。さらに、軟X線のエネルギーを特定元素のX線吸収端に合わせて行う共鳴X線磁気散乱を利用して、磁性体中に現れる磁区構造の観測にも成功している。 試料作成の方では、Co薄膜の試料作製も条件出しをDCスパッタを用いて行ったほか、端子付のために導入した絶縁層としてSiO2の蒸着をACスパッタを利用することで成功した。これにより、顕微鏡装置と試料作製はほぼ完了したが、試料にマイクロ波導入のための金属端子の設置が行えず、時分解測定には移れなかった。ただし、金属端子の設計は既に済んでおり、本年度にすぐに作製に取り組めることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和1年度に立ち上げが完了した軟X線回折顕微鏡を利用して、時分解測定の実験に移る。時分解測定では、マイクロ波により磁性体薄膜にACスピン流を誘起し、その時間的発展をコヒーレント軟X線により観測する。そのために、令和1年度に進めていた磁性体薄膜試料の作製をまず完了させる。磁性体薄膜作製には、東北大学や物質材料機構の設置されているスパッタ装置やリソグラフィー装置を用いる。マイクロ波測定に必要なベクトルアナライザーは既に購入済みであり、試料が出来次第、試料評価を行う。その後、本年度の後期に、大型放射光施設PhotonFactoryにおいて作製した試料を用いた時分解磁気イメージングを行う予定である。時分解測定は、放射光シンクロトロンのRF信号とマイクロ波を同期させることで実施する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、マイクロ波導入のための機器の購入が不要となったため。また、令和1年度後期に予定していた学会参加費、旅費が不要であったため。
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