2019 Fiscal Year Research-status Report
Spatio-temporal optical analysis of novel photon conversion mechanisms in supramolecular ferroelectrics
Project/Area Number |
19K23592
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野間 大史 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (30846283)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 超分子 / 極性 / 光第2高調波発生 / 時空間分解 / 光電変換 / シフトカレント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サブフタロシアニンなどの超分子膜における光電変換現象の時空間的な解析を行う。具体的には、光第二高調波(SHG)顕微鏡による非線形分光イメージングと非線形分光時間分解測定を同時に行う測定系を構築することにより、シフトカレントに代表される新規な光電変換メカニズムの解明を目指す。 令和元年度は、SHG顕微鏡により、超分子サブフタロシアニンの極性ドメインを空間的に解析することを目的として研究を行った。ガルバノミラーを用いて試料に照射するレーザー光をスキャンし、電子増倍CCD(EMCCD)カメラを用いて試料から発生したSHG信号を検出するSHG顕微鏡を構築した。目標の数マイクロメートルの分解能で空間分解測定を行うことができた。また、SHGスペクトルの測定系の構築も新たに行い、サブフタロシアニンのSHG信号は波長400 nm付近で強く発生することが分かった。これはサブフタロシアニンに照射する励起光の影響を受けずにSHG信号を検出できることを意味しており、次年度につながる良い結果が得られた。 また、シフトカレントの評価に関連して新規材料のキラルペロブスカイトについても、SHGのイメージングおよび光電流測定を行った。この材料からも波長400 nmでの強いSHG信号を確認でき、サブフタロシアニンと同じSHG顕微鏡を用いてシフトカレントの時空間分解解析が行えることが明らかとなった。また共同研究により、キラルなポリマーの磁気双極子遷移についてもSHGによる解析を行い、学会で発表を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の令和元年度は、SHG顕微鏡による非線形分光の空間分解測定系を構築し、超分子サブフタロシアニンの極性ドメインで起きる光電変換現象を空間的に解析することを目的として研究を行った。当初の計画ではXYピエゾステージを利用してサブフタロシアニンより発生したSHGの信号強度をマッピングする予定であったが、ピエゾステージや分光器の導入、および測定プログラムの構築に予定より時間がかかってしまい、その測定系は現在も構築が完了していない。しかし一方で、ピエゾステージの代わりにガルバノミラーを使用してレーザー光のスキャンを行うことで、目標の数マイクロメートルの分解能で空間分解測定を行うことができた。現在は光電流との相関を見るために光照射装置をSHG顕微鏡に組み込むための準備をしている。以上のように、非線形分光の空間分解測定系を構築するという最低限の目標は達成したものの、サブフタロシアニンの光電変換現象の解析はまだ行えておらず、本研究課題はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、新たに時間分解測定系を構築し、超分子サブフタロシアニンで起きるシフトカレントなどの量子力学的な光電変換メカニズムについて時空間双方から解明することを目標にする。そのためにまず、試料に光起電力を発生させるための光照射装置を前年度構築したSHG顕微鏡に組み込み、サブフタロシアニンの光起電力発生に伴う極性構造の変化を空間分解測定により解析する。その後ピコ秒領域の時間分解測定を行い、光起電力の発生によって起きる極性構造変化の時間発展を解析する。超分子において望ましい結果が得られなかった場合は、ペロブスカイトなどのシフトカレントが発生する他の材料も試みる予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度に構築する時間分解測定系用に新たに光照射装置を購入する必要性が出てきたため、令和元年度に本予算で購入を予定していた光学フィルタ等を研究室の予算から支出することにしたためである。また、新型コロナウイルス感染症拡大予防のために参加を予定していた学会が複数キャンセルとなり、参加費・旅費の支出が減ったことも原因である。 令和2年度は、SHG顕微鏡に組み込むための光照射装置や電圧印加装置など、比較的高額なものを購入する予定である。学会が中止になることや購入した装置の納期が遅れることも想定して、余裕を持って予算を使用するようにする。
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