2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K23595
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中川 充 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (60848274)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 金ナノワイヤー / 金ナノ粒子 / キラリティ / らせん構造 / ソフトテンプレート法 / 低分子ゲル化剤 / ナノチューブ / STEM-EELS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は直径や長さを調節して合成したらせん状金ナノワイヤーの光学特性について検討した。 昨年度に実施した金ナノワイヤーの合成法の検討を元に、金前駆体および還元剤比率を調節することで、直径が約3 nmで長さが>400 nm程度のらせん状金ナノワイヤー(NW-3)と、直径が約8 nmで長さが<400 nm程度のらせん状金ナノワイヤー(NW-8)をそれぞれ合成した。なお、らせんピッチはともに約170 nmであった。 これらの分散液の紫外-可視-近赤外領域における光吸収スペクトルを測定したところ大きな違いがみられた。NW-3の分散液では近赤外-中赤外領域にかけてブロードな吸収スペクトルを示したのに対し、NW-8では波長1350 nm付近にピークを有する近赤外領域に強い吸収スペクトルを示し、NW-3と比べて吸収波長がブルーシフトした。さらに、紫外―可視領域における円偏光二色性スペクトルを測定したところ、波長500 nm以降(850 nmまで測定)の楕円率の正負が、同じ巻き方向のらせんであるにも関わらず、NW-3とNW-8で逆転した。 金ナノワイヤーの光学特性変化の原因について考察するため、電子顕微鏡による電子エネルギー損失スペクトル(STEM-EELS)を、同試料内に存在する長さの異なる個別のナノワイヤーについて測定した。直径約10 nmで長さの異なる二本のらせん状金ナノワイヤーの、m=2のモードに由来するエネルギー損失を比較したところ、長さ約150 nmの金ナノワイヤーでは0.9 eV(波長1378 nm)付近に、長さ約200 nmの金ナノワイヤーでは0.7 eV(波長1771 nm)付近に、エネルギー損失の極大値を示した。すなわち、NW-3およびNW-8の光吸収および円偏光二色性の変化は、主にナノワイヤーのアスペクト比、特に長さの変化に由来することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成条件を調節することで、らせん状金ナノワイヤーの直径および長さの制御に成功した。また、合成時に特定のアニオンを添加することでナノワイヤーの径が微妙に変化することを発見し、トップダウン加工が困難な10 nm未満の領域における金ナノ粒子の形状制御に関する重要な知見を得た。また、異なる構造を有するらせん状金ナノワイヤーについて光学特性を比較し、ナノワイヤーの長さまたはアスペクト比が光吸収および円偏光二色性に対して主に影響を与えることを明らかにした。 さらに、金ナノワイヤーのらせんピッチやらせんの径を制御するために分子集合体鋳型の形状制御法について検討した。添加する分子の鏡像異性体過剰率を制御することで、ねじれたリボン状、チューブ状、板状のように異なるナノ構造を有する分子集合体を調製した。しかしながら、これらの分子集合体はやや混合した状態で得られてしまう。これい加えてチューブ状の分子集合体の内径、外径、チューブ内に存在するらせん構造については、集合体間で大きなばらつきがあり、精密ならせんピッチの制御には至っていない。以上の結果から、より高い構造の選択性を有する分子集合体の調製法をさらに探索する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
可視光領域に光吸収や円偏光二色性を示すナノ材料は応用範囲が広いだけでなく、分光による解析も比較的容易である。そこで、可視光領域により高い非対称性因子を有するキラルプラズモニック材料の作製を試みる。 先行研究において合成した直径約3 nm、長さ数百nm~数μmのらせん状金ナノワイヤー(NW-3)の分散液は、近-中赤外領域に強い光吸収を示すが、g値は他のキラルプラズモニック材料と比較して高くなかった。本研究で合成した直径約3 nm, 長さ数百ナノメートルのNW-8はNW-3と比べて高いg値を示したことから、らせん構造を維持しつつ、より小さいアスペクト比を有する金ナノワイヤーを合成することで、可視光領域のg値を向上できると考えている。また、現在NW-8の合成には2週間程度の時間を有することから、より迅速にナノワイヤーの形状を制御できる新たなアプローチについても探索していく。そのために、ナノワイヤー分散液の化学的なエッチング処理、超音波処理、加熱処理などについての知見を得る。 また、ナノワイヤーの鋳型となる分子集合体の形状制御については、ねじれたリボン、チューブ、平板状である程度選択的な調製条件は見出しているものの、より高い選択性を有する調製条件を探索する。
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Causes of Carryover |
参加する予定であった国際会議が次年度に延期されたため旅費に充当する予定である。論文投稿のための英文校閲費、投稿料に充当する予定である。また、より精緻に研究目的を達成するために必要な消耗品購入に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)