2020 Fiscal Year Research-status Report
新たな高伸張性・生分解性ポリマーを用いた軟部組織再建用医療材料の開発
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19K23603
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村山 敦彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90844457)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | PHA / 生体適合性 / 高伸張性 / 分解性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内における実験 エチレンオキシド滅菌した新規PHAを用いた多孔性医療機器サンプルをラットの背部皮下組織に一定期間埋植したのちに取り出し、その構造を肉眼的及び走査性電子顕微鏡を用いて微視的に観察した。また周囲の組織とともに固定・染色を行い、組織学的に観察した。さらに、引張強度や伸展性が初期値に比してどれほど残存しているかを確認した。結果、埋植後1年経過時において、全てのサンプルは肉眼的には複数箇所で分断されており、部分的な分解が生じていた。周囲の皮下組織との癒着は軽度で皮下膿瘍などの明らかな感染徴候は認めなかった。サンプルを走査性電子顕微鏡で観察すると、微細な亀裂やクレーター状変化が進行し、緩徐な分解を認めた。また、HE染色ではサンプル周囲には好中球や単球などの貪食細胞の数は多くなく、周囲組織における炎症の程度は、現存する医療用吸収性ポリマーと比して小さいことが示唆された。さらに、生体内における引張強度の半減期間はおよそ26週であった。伸展性は26週経過時に初期値のおよそ80%を維持していた。以上より、本サンプルは(1)ラット背部皮下組織において少なくとも1年間は完全には吸収されずに残存することから、緩徐な生体吸収性を持つこと、(2)肉眼的にも組織学的にも有害事象を認めないことから、優れた生体適合性を持つこと、(3)生体内において中長期の強度と伸展性を維持できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、新規PHAを用いた軟部組織再建用の医療機器の開発を目指し、その元となる三次元構造サンプルにおける(1)分解性・吸収性、(2)生体適合性、(3)強度等の残存率をin vivo/ in vitroで調査することである。その点では、研究の進捗状況に極端な遅れはないと言える。しかし、新型コロナ肺炎の流行に伴い、研究開発のいくつかのフェーズで遅延が発生している。素材としてのPHAの精製においてその効率化や量産化を目指す中で、共同研究施設への現地視察および打ち合わせを2020年4月23日に予定していたが、県を跨いでの移動が自粛となり中止となった。リモートワーク推進に伴い動物実験施設の職員が不足し、2020年4月と5月は新規動物の搬入禁止と動物実験棟の入館制限があったことも新たな実験系が組みにくい一因であった。また、2020年~2021年の海外・国内学会は中止あるいはWEB開催となったことに加えて特許申請の兼ね合いもあり、もともと予定していた学会発表が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新規PHAを用いた多孔性医療機器サンプルの現在の問題点として、形状が滑らかでないこと、サンプル毎に孔の数や大きさが異なることが挙げられる。今回の研究成果を共同研究機関にフィードバックすることで多孔性構造の均一化や再現性の向上を実現し、医療ニーズに則した最適な新規医療機器を開発していく必要がある。その上で、このサンプルに対して改めて非GLP下の生物学的安全性評価やin vitro/in vivo の統計学的な定量評価を行う。現存する医療用デバイスとの比較検討も行う。
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Causes of Carryover |
2020年4月、5月は生体内実験に用いる実験動物や新たな物品の購入を計画していたが、新型コロナウイルス流行による影響のため、新規実験動物の搬入禁止および動物実験棟への入館制限があった。また、出張が制限されており、2021年4月以降に予定されていた国内・国際学会はWEB開催への変更や中止が相次いでいる。したがって、旅費として 予定していた支出や会議室借用費等がなくなった経緯がある。2021年度もWEB会議やリモートワークを余儀なくされることが予想されており、世の中の情勢を見ながら適宜柔軟に実験計画を変更していく必要があると考える。
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