2019 Fiscal Year Research-status Report
膵島脂肪由来幹細胞シートにおける皮下と肝表面移植成果及び免疫応答能の差異の検討
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19K23608
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 貴裕 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (60849511)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 膵島/脂肪由来幹細胞複合シート / 膵島 / 脂肪由来幹細胞 / 1型糖尿病 / 移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵島移植の成績向上のため、細胞シート工学を用いた皮下移植が研究されてきた。我々は、糖尿病ラットへの膵島/間葉系幹細胞(MSC)複合シート皮下移植での耐糖能改善、MSCの中でも脂肪由来幹細胞(ADSC)の有用性を報告した。一方膵島単体シートでは、マウスで皮下より肝表面移植の方が血糖正常化に優れていたと報告された。肝表面移植は臨床的には侵襲が大きい。膵島/ADSC複合シートであれば、血管新生誘導/ 膵島細胞保護効果により皮下移植でも肝表面移植と同等な成績が期待できる。 まず、糖尿病モデルマウスの作製を行った。論文より引用し、C57BL/6Jマウスにストレプトゾシン(220mg/kg BW)を腹腔内投与して、血糖350mg/dL以上を糖尿病発症と判定した。この手法での糖尿病マウスモデルの糖尿病発症率は60-70%程度とされており、本実験でも75%の発症率であった。 次に、本実験に入る前に線維芽細胞、膵癌細胞株などをup cellに播種することで単培養シートや共培養シート作りの手技を安定させた。 次にラット膵島の分離に着手した。膵臓の消化に用いるコラゲナーゼを注入するため、ラットの胆管へカニュレーションする技術が必要であり、手技獲得に時間を要した。手技が安定したところで膵島分離を行った。動物実験施設でラット膵臓へのコラゲナーゼ注入、膵全摘などを行い、当科実験室で振盪、ろ過、濃度勾配液を加えての遠心処理等を行って膵島の分離を行った。 今後、ADSC分離手技を安定させて膵島との共培養複合シートを作成し、移植実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、2019年度末までにラットADSCの分離手技の安定およびシート作成までを終える予定で計画していた。現状では膵島分離手技までは獲得している。やや遅れている原因としては、膵島分離の際のラットの手術においてラット胆管へのカニュレーションという微細な作業が求められ、手技習熟に期間を要したことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ラットADSC分離手技にとりかかり、膵島/ADSC複合シートを作成する方針である。ADSC分離についてはこれから着手する方針であるが、万一手技獲得が困難な場合は専門業者からラットADSCを購入して代用することも考慮に入れている。 膵島/ADSCシートを作成する手技を獲得したところで糖尿病マウスを作成し、コントロール群(n=10)、皮下移植群(n=10)、肝表面移植群(n=10)とする。これまでの検討と違うところは、非免疫抑制マウスを用いることで、ADSCのもつ免疫回避能を検討する。皮下移植群にはセボフルレン2.5%経気道投与による全身麻酔下で腹部皮下に皮弁を形成し、膵島/ADSC複合シートを移植する。肝表面移植群にはセボフルレン2.5%経気道投与による全身麻酔下で開腹、肝臓を露出する。肝左葉外側区を滅菌綿棒で10mm^2程擦過し、肝被膜を除去して膵島/ADSC複合シートを移植する。 移植後、7日目、14日目、28日目にセボフルレン2.5%経気道投与による全身麻酔下で尾の静脈より採血を行い、血糖、血清インスリン、血清Cペプチドについて各群で比較する。ELISAキットで測定でき、移植膵島由来のインスリンかどうか判別できる。28日目の採血の際には、下大静脈採血により安楽死させ、移植片を摘出し10%ホルマリンで固定する。作成した標本について免疫染色(CD3,11b,45)等で観察し、各群間の免疫応答について比較する。
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Causes of Carryover |
膵島分離の際のラットの手術においてラット胆管へのカニュレーションという微細な作業が求められ、手技習熟に期間を要し、ADSC分離実験がまだ施行できていない。そのため、ADSC分離実験にかかる費用について次年度使用額が生じた。 ADSC分離実験の遂行に必要なコラゲナーゼ等の試薬購入費用に加え、研究の結果を学会発表する際の旅費、英文誌投稿に関わる校閲費等に使用する。
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