2019 Fiscal Year Research-status Report
新規構造と機能を持つ有機無機複合粒子を用いた骨粗鬆症治療の実現
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19K23611
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小松 周平 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (60843844)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 骨粗鬆症治療 / 骨再生 / 薬物担体 / 感温性分解性高分子 / 有機無機ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「世界初となる薬物内包可能な骨誘導能を持つ炭酸アパタイト粒子を用いた骨粗鬆症治療」を目的として、今年度では、炭酸アパタイト粒子のリン酸化が与える影響、薬物担持・放出能の評価を重点的に行った。骨再生足場材料は、炭酸アパタイトが与える骨伝導能と速やかな骨再生のため、薬物を担持・放出できる能力は重要な要素となる。作製した炭酸アパタイト粒子表面のリン酸化時間により、炭酸アパタイト粒子の粒径制御と炭酸アパタイト含有量の制御が可能であることがわかった。また、炭酸アパタイト粒子は表面に骨誘導付与のためのBone Morphogenetic Protein-2 (BMP-2)を担持でき、粒子内部に骨粗鬆症治療のための薬物を担持が可能であった。またアルカリ、酸環境下のみで、内部の薬物が放出することがわかった。さらに、作製した粒子表面は、BMP-2などのタンパク質(高分子量体)は粒子表面でトラップするが、低分子は内部まで侵入でき、粒子内部に存在する高分子層で低分子を濃縮・担持していた。以上の結果は、骨再生初期に表面のBMP-2が作用し、その後、破骨細胞の産出する酸により内部の薬物が放出しうることを示唆しており、骨再生材料として重要と考えられる。さらに、粒子表面の低分子のみを透過する孔は、粒子作製後に低分子薬物を導入できることを示しており、抗菌薬をはじめとする様々な種類の薬物を、治療に応じて選択し、簡便に導入できることを示唆している。以上の結果より、薬物内包可能な骨誘導能を持つ炭酸アパタイト粒子の作製ができ、骨粗鬆症をはじめとする様々な骨疾患の治療の基盤材料としての応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時において、2年間で5つの項目を明らかにすることを記載し、今年度は3つの項目を明らかにしている。この5つの項目は、大きく分けて材料設計・物性評価とin vivo, vitroにおける材料評価であるが、材料設計・物性評価の面、「表面リン酸化による粒子表面CO3Ap化がCaCO3粒子に与える影響」、「内部に骨誘導できる薬物の内包能解析」、「pH変化に伴う内包薬物の放出試験」を明らかにしていることから、順調であると判断できる。 2020年度は、作製した材料で「骨芽細胞(MC3T3-E1)を用いた、CO3Ap粒子の骨誘導能評価」と「マウスへのCO3Ap粒子インジェクションによる骨再生・形成能評価」を行う予定であり、細胞実験・動物実験の準備はすでに整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は、当初の予定通り、作製したCO3Ap粒子を用いて「骨芽細胞(MC3T3-E1)を用いた、CO3Ap粒子の骨誘導能評価」と「マウスへのCO3Ap粒子インジェクションによる骨再生・形成能評価」を行っていく予定である。骨誘導能評価においては、薬物を担持したCO3Ap粒子存在下で骨芽細胞(MC3T3-E1)を培養することで、アルカリフォスファターゼ活性評価や染色を行い、骨誘導能の評価を行う。また、マウスの背中と尾椎に作製したCO3Ap粒子をインジェクションすることで、異所性骨形成能と同所性骨形成能の評価を行っていく。マウスへのインジェクション後は、新生骨の染色や骨形成の速度などの評価を行う予定である。その後、得られた結果で論文を執筆する予定である。
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Research Products
(11 results)