2020 Fiscal Year Research-status Report
ティッシュエンジニアリング技術による3次元大脳組織の作製
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19K23613
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
赤木 祐香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50849544)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 大脳組織 / ティッシュエンジニアリング / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は灌流型の三次元デバイスシステムを用いたティッシュエンジニアリング技術により、in vitroで構造を制御し、秩序あるヒト大脳組織を構築することを目的としている。昨年度は、従来のオルガノイド作製技術を用いて、ヒト多能性幹細胞から大脳組織への誘導方法を確立した。今年度は、三次元デバイスに充填したハイドロゲル内で大脳組織を誘導し、培養液を灌流させることで、大脳組織の成熟化を行うことを計画していた。大脳組織の構築に向け、下記2点について検証を行った。 ①ハイドロゲル内での神経細胞の培養における条件検討:灌流型三次元デバイスシステムに充填するハイドロゲルとして、コラーゲンとマトリゲルの混合ゲルを用いた。そのため、ヒトiPS細胞由来の神経細胞を用いて細胞の維持及び分化誘導に適切な、混合ゲル比の条件検討を行った。また、ゲル内培養における最適な細胞濃度についても条件検討を行った。 ②灌流型の三次元デバイスシステムを用いた大脳組織の作製:これまでに、皮膚や肝臓の組織モデルの作製に用いられた三次元デバイス(Mori, N., et al., Sci. Rep., 2020) による、大脳組織の作製を試みた。細胞をハイドロゲルで懸濁し、三次元デバイス内に充填し、シリンジ針をゲル内に貫通させることで、空洞の流路を形成させた。これにより、ゲル内の空洞に培養液を灌流することができる。最適化した混合ゲル比と細胞濃度でヒト多能性幹細胞をデバイス内に充填し、シリンジポンプを用いて培養液を灌流させながら、大脳組織への分化培養を行った。しかし、ゲルの収縮や流路の縮小により三次元デバイスシステムを用いた長期間の培養は課題が多く、デバイス内でのヒト多能性幹細胞から層構造を持つ大脳組織への誘導は困難だった。そのため、長期培養を可能にする新たなデバイスの設計や分化した神経細胞を充填するなど、現在検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定してた灌流型3次元デバイスでの大脳組織の作製方法において、長期培養や充填する細胞種においていくつか課題が生じた。現在は、多能性幹細胞をデバイスに充填し、デバイス内で分化誘導する手法から、分化誘導した神経細胞を充填する手法に切り替えて推進している。 さらに、灌流が可能な大脳組織は、脳組織における薬剤応答性の検証といった、創薬への応用が期待される。大脳組織における複数の候補分子に対する薬剤応答を低コストに高速に評価できる技術が必要であると考え、新たにラマン分光法を用いた生体組織の評価技術の開発も並行して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の予定を継続し、灌流型三次元デバイスでの大脳組織の構築を目指す。また、薬剤を灌流させることで、大脳組織への応答性を遺伝子発現解析、ELISAや免疫染色、ラマン分光法を用いて評価する。
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Causes of Carryover |
COVID-19に関する緊急事態宣言により、一時的に実験継続が不可となり、実験計画の遅れが生じている。今年度は、昨年度予定していた、灌流型三次元デバイス内での大脳オルガノイドの作製と、その機能解析に必要な、細胞培養試薬や、抗体等を購入予定。
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