2019 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of polymer gel with precisely predictable network
Project/Area Number |
19K23619
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿南 静佳 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (40850136)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 三次元高分子ネットワーク / 高分子ゲル / パーコレーション / 精密重合 / 金属-有機構造体 / 固相重合 / 事後修飾反応 / 多孔性結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、精密な三次元高分子ネットワークを①規則的に固定したモノマーと架橋剤を配列したまま重合することによる合成、②実際のモノマーと架橋剤の配列に基づいたパーコレーションシミュレーションによる構造の予測について取り組んだ。 ①について、反応点としてアジド基を2点および4点有する同じ骨格の分子を有機配位子として、金属-有機構造体 (MOF) 中に固定および配列し、任意の割合で混合した同じ結晶構造のMOF (MTVMOF) を合成できることを明らかにした。さらに、アルキニル基を2点有するモノマーを外部から導入し、ヒュスゲン環化付加反応により固定されたモノマーと架橋剤同士に共有結合を形成することで、三次元の高分子ネットワーク構造を生成した。また、架橋剤がある一定以上の割合の場合、結晶全体に三次元ネットワークが広がり、高分子ゲルが生成することが明らかになった。 ②について、実際のMOF中に固定されているモノマーと架橋剤の配列を用いて、反応点の数に制限を導入したパーコレーションシミュレーションを構築した。固定するモノマーと架橋剤の比率を変化したシミュレーションを行ったところ、ある一定以上の架橋剤が含まれる場合、パーコレートが生じ、その値が実験値と近い値をとることが明らかとなった。以上の結果から、本手法で合成したゲルはパーコレーションシミュレーションにより実験系をよく予測できることが示唆された。 このように本年度は、モノマーと架橋剤を固定・配列し、固定したままの状態で重合することで、三次元高分子ネットワークを合成に成功した。さらに、パーコレーションシミュレーションによりその構造の予測に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、精密な三次元高分子ネットワークを①規則的に固定したモノマーと架橋剤を配列したまま重合することによる合成、②実際のモノマーと架橋剤の配列に基づいたパーコレーションシミュレーションによる構造の予測について取り組んだ。まず①について、モノマーと架橋剤を規則的に配列したまま重合することで、三次元高分子ネットワークの合成に成功し、そのネットワーク構造の合成条件に付いて詳細に検討した。その結果、架橋剤の割合がある一定以上において、元の結晶の形状を反映したゲルが生成することが見出された。さらに②について、モノマーと架橋剤を実際に固定されている配列に基づいてパーコレーションシミュレーションを行った。シミュレーションにおいても、実験と同様に架橋剤がある一定の割合以上の場合に、パーコレートすることが明らかとなった。また、その値が実験値とほぼ一致したことから、生成するネットワーク構造のパーコレーションシミュレーションによる予測に成功したことが示唆された。 このように、当初の計画である、モノマーと架橋剤を固定・配列し、配列したまま重合することで高分子ネットワークを合成する手法を開発し、その構造をパーコレーションシミュレーションにより精密に予測するという当初の計画をおおむね達成していることから、本研究の現在までの進捗状況は「おおむね順調に進行している」と結論付けることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は実験的に合成したゲルとシミュレーションしたネットワーク構造の精密な比較に取り組む。モノマーと架橋剤の固定により合成したゲルは、ゲル化に必要な架橋剤の割合についてはシミュレーションとよく一致することが明らかになっている。従来のパーコレーションシミュレーションでは実際のモデルとの不一致から、ゲル化の予測に限られてきた。本手法ではゲル分率の精密な予測、実際に架橋点として機能している架橋点の結合数や、架橋点間分子量、末端鎖の本数や分子量を詳細に明らかにできると期待される。今後はシミュレーションしたネットワーク構造の更なる解析を行うとともに、合成したゲルの元素分析や膨潤率測定、力学強度の測定を行うことで、両者の比較を行い、ネットワーク構造と力学特性の相関性を調べる。さらに、ウレタン形成反応などヒュスゲン環化付加反応以外の反応性官能基によるゲルの合成にも取り組む。
|