2019 Fiscal Year Research-status Report
新規ビススピロアセタール骨格構築法を基盤とした生物活性天然物の収束的全合成
Project/Area Number |
19K23620
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅原 厚志 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (40847018)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ニッケル触媒 / 環状酸無水物 / クロスカップリング / 炭素-炭素結合形成 / ビススピロアセタール / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然にはビススピロアセタールといった特異な構造を有する天然物が多く存在する。それら天然物は顕著な生物活性を有しているため医薬開発やケミカルバイオロジー研究の発展には効率的な合成法開発は重要な研究課題である。しかし、従来のビススピロアセタール骨格構築法は効率的でないのが現状であった。 そのような背景のもと、本研究課題の初年度は、効率的な新規ビススピロアセタール骨格構築法の開発を目指して、環状酸無水物とアルキルハライドとの炭素-炭素結合形成を伴う新規クロスカップリング反応の開発に挑んだ。即ち、基質としてヨードベンゼンと無水コハク酸を用い、0価ニッケル触媒を10mol%用い、種々の条件を検討した。その結果、触媒はNi(cod)2が最適であることがわかり、THF中で基質等モル両用いると20%前後と低収率であるが目的の1,4-ケトカルボン酸が得られた。さらに、添加物の効果を調査した結果、ヨウ化マグネシウム(MgI2)とヨウ化リチウム(LiI)を同時に添加すると収率が45%まで向上することがわかった。本反応で得られる1,4-ケトカルボン酸はビススピロアセタールの良好な前駆体となる。また、本反応は室温以下の温和な条件下で進行するため、官能基共存性がよく天然物合成に用いられる複雑に官能基化された基質にも応用可能であると考えられるため、この結果は非常に意義が高い。また本反応は、ニッケル触媒を用いた環状酸無水物とアルキルヨージドとのワンポット炭素-炭素結合形成カップリングの初の反応であり新規性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度開発したニッケル触媒を用いたアルキルヨージドと無水コハク酸のカップリング反応は非常に温和な条件で速やかに進行する。そのため複雑に官能基化された基質に応用可能であると考えられ、高生物活性天然物の合成に広く応用可能であると期待できる。特に、開発した上記の反応は、本研究課題で取り上げているビススピロアセタール型天然物の前駆体となる1,4-ケトカルボン酸を与える。そのためビススピロアセタール型天然物の収束的合成を可能とするポテンシャルを大いに有している。現在最大収率が45%と中程度であるが、反応の新規性と有用性を考慮に入れると現在研究は、概ね順調に進展している、と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はニッケル触媒を用いたカップリング反応の収率改善のために反応の条件を精査する。具体的には、ニッケル触媒に用いる配位子の検討を行う。現在までに、反応溶媒、添加物の検討を行ったが配位子の検討は行っておらず、配位子が及ぼす反応への効果が大きいと予測される。収率改善後はビススピロアセタール形成を検討する。
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