2019 Fiscal Year Research-status Report
創薬化学を指向した三次元構造に対する効率的変換法の開発
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19K23621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金澤 純一朗 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (60844636)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 創薬化学 / 三次元化合物 / 電荷シフト結合 / ビシクロ[1.1.1]ペンタン / [1.1.1]プロペラン / 反応開発 / 光反応 / シリルボラン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の創薬化学では、ベンゼン環に代表される sp2 炭素を主とする平面構造から脱却し、物性や安全性の点で優れた sp3 炭素からなる三次元化合物が求められている。その中でも、ビシクロ[1.1.1]ペンタン (以下、BCP) は、ベンゼン環の生物学的等価体として、また最少ビシクロ化合物として近年特に注目されている三次元化合物である。しかしながら、BCP は高度に歪んだ多環構造を有するため、その合成化学は一般に困難を伴い、入手・利用可能な BCP 誘導体は限られている。特に、橋頭位である 1,3-位に官能基を非対称に導入する新たな反応の開発が望まれている。 前年度は、低沸点かつ不安定な BCP の原料である [1.1.1]プロペラン (以下、プロペラン) を、安定かつ多様な誘導体化が可能な BCP 化合物に変換することを研究の目的に設定した。そこで、プロペランをホウ素・ケイ素官能基を有する非対称二置換 BCP に変換するために、プロペランに対するシラボレーションの開発を検討した。購入可能な試薬である Me2PhSi-Bpin (pin=pinacolato) をホウ素・ケイ素源として、反応条件を検討したところ、添加剤フリーの条件下、高収率にて目的のシラボレーションが進行することを見出した。本反応は、カラムクロマトグラフィー精製を必要とせず、グラムスケールでの合成が可能であった。生成物である、ホウ素・ケイ素化された BCP 誘導体は長期保存可能で取り扱いが容易であり、分子内転位反応による多様な変換が可能であることを見出した。さらに、嵩高い BCP の橋頭位における鈴木-宮浦カップリング反応を可能にする新たな反応条件を見出し、分子間カップリング反応を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったプロペランに対するシラボレーションを開発することで、多様な変換が可能であり、長期保存可能なホウ素・ケイ素化された BCP の簡便合成法を確立した。さらに、生成物の変換反応を開発することで、生理活性物質の誘導体を含む幅広い BCP 化合物を合成した。本成果は、本年の Angew. Chem. Int. Ed. 誌に採択された。 さらに、プロペランは低沸点かつ不安定であり用事調製が必要であることが課題であるが、その安定前駆体を用いた新たなプロペラン合成法を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、安定前駆体を用いたプロペラン合成の最適化ならびに簡便な精製法の確立に向けての検討を実施する。
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Causes of Carryover |
当初、昨年度の購入を予定していたフロー合成装置を、今年度に購入することにしたため次年度使用額が生じた。
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Research Products
(9 results)