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2019 Fiscal Year Research-status Report

水和環境下における金属ポルフィリン化合物の励起エネルギー移行過程の解明

Research Project

Project/Area Number 19K23622
Research InstitutionTokyo University of Agriculture and Technology

Principal Investigator

熊谷 嘉晃  東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60842739)

Project Period (FY) 2019-08-30 – 2021-03-31
Keywords励起エネルギー移行 / 金属ポルフィリン化合物 / 水和環境 / 光アンテナ分子 / 人工光合成 / 時分割X線光電子・オージェ電子分光 / 液体分子線
Outline of Annual Research Achievements

金属ポルフィリン化合物は, 可視光を100% 近い量子効率で吸収するだけでなく, 高い励起エネルギー移行(EET)効率を有するため, 金属ポルフィリン化合物は人工光合成におけるアンテナ分子をはじめとし, 幅広く研究・活用されている. 当該研究の目的は, 水和環境下での水分子配位子結合による金属ポルフィリン化合物の構造・電子状態の変化, およびそれらが果たすEET効率への協同効果を解明することであった. 当該研究目的の達成へ向けて, シンクロトロンX線と液体分子線を用いたX線吸収スペクトル測定によって, 水和環境下における金属ポルフィリン化合物の構造・電子状態変化を明らかにすために研究を行った. また, 将来的にはフェムト秒の超短パルス性を有するX線自由電子レーザーを用いた時分割X線光電子・オージェ電子分光法によって, 太陽光源に相当する光学レーザーにより誘起された金属ポルフィリン化合物のEET過程を実時間計測し, 水和環境下における金属ポルフィリン化合物のEET効率の根拠を明らかにすることを目指した.
光電子・オージェ電子分光法を実施する上では, 真空環境が不可欠である. 一方で, 本研究では, 水和環境下における金属ポルフィリン化合物を標的とする. 即ち, 真空および水和という相反する条件を融合する必要がある. そこで, 真空実験装置内部に水和試料を導入することができる液体分生技術が必須である.
助成期間2019年11月から2020年3月にかけて, 従来使用してきた液体分子線システムでは実験条件の安定下という観点から時分割X線光電子・オージェ電子分光実験を実施する上では不十分であることが明らかとなった. 実験条件を安定させるために, 新たな液体分子線ノズルを作製し, その性能評価を実施した. 開発された液体分子線ノズルを用いいることで, 実験条件の安定化が達成された.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当該研究の最終目標は, 水和した金属ポルフィリン化合物を標的とした時分割X線光電子・オージェ電子分光測定により水和金属ポルフィリン化合物内の励起電子・正孔移動過程を実時間計測し, 励起エネルギー移動効率に対する水和環境の協働作用を解明することであった. そのために, 初年度ではシンクロトロン放射X線と液体分子線を組み合わせ, 水和金属ポルフィリン化合物の光電子・オージェ電子分光計測を実施する予定であった. 電子分光計測には真空条件が必須である. そこで, 真空実験槽へ水和試料を導入するために液体分子線技術を用いる. しかし, 従来使用してきた液体分子線システムでは, 液体分子線の安定度および再現性が時分割X線光電子・オージェ電子分光測定を実施する上で不十分であることが判明した. そこで, 液体分子線の安定度および再現性の向上を目指し, 水和試料を真空実験槽へ噴射する液体分子線ノズルを新たに開発し, その性能評価を行った.
従来の液体分子線ノズルは, 電子顕微鏡の絞りとして用いられる内径20マイクロメートル(μm)の白金アパーチャを射出口として使用してきた. しかし, 液体分子線を真空実験槽へ噴射する際に, 試料導入部には1 MPa(大気圧の10倍)程度の高圧がかかるため, 液体分子線の凍結や試料内部のダスト等により射出口が詰まると, 直ちに白金アパーチャの細孔部が変形してしまう. そこで, 放電加工技術によりステンレス鋼を用いて耐久性の高い液体分子線ノズルを製作した.
新たに製作した液体分子線ノズルを用いて, 真空実験槽へ液体分子線を導入した. 長焦点カメラによる画像解析により, 従来使用してきた液体分子線試料と同程度の形状であることを評価した. また, 光電子分光実験を行う上で十分な真空度が保たれていることが確認された.

Strategy for Future Research Activity

当該研究では, シンクロトロン放射X線と液体分子線を組み合わせ, 水和金属ポルフィリン化合物の光電子・オージェ電子分光計測を実施する予定であった. そこで, 初年度では真空実験槽へ液体試料を導入する液体分子線システムの心臓部であるノズルの開発を行った. これにより, 従来の液体分子線が抱えていた安定性および再現性という課題が解決された.
次年度においては, 新たに開発した液体分子線ノズルを用いて, 水和した金属ポルフィリン化合物の光電子・オージェ電子分光実験を放射光施設SPring-8にて実施する予定であった. 当該研究は, 2020年度 若手研究"金属ポルフィリン多量体の励起エネルギー移行効率に対する水和環境の協働作用"へ引き継がれる.
新たに開発した液体分子線ノズル先端の外径は2 mm であり, 従来使用していたもの(10 mm)よりも遥かに小さい. そのため, 新液体分子線ノズルを使用することで, シンクロトロン放射X線と液体分子線の相互作用領域から1 mm の距離まで, 光電子分光器の入口アパーチャを近づけることが可能になる. これにより, 光電子分光器の入口アパーチャの内径を0.1 mm程度まで狭めることができ, 光電子分光装置の真空度を更に高め, シグナルノイズ比を向上し, より高エネルギー分解能のX線光電子・オージェー電子スペクトルの取得が可能になると期待される.

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Published: 2021-01-27  

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