2019 Fiscal Year Research-status Report
湾曲したπ共役面の自己集合を活用した新規蛍光材料の創製
Project/Area Number |
19K23623
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山科 雅裕 東京工業大学, 理学院, 助教 (80847153)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 分子内包 / パイ共役系 / ホストゲスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、湾曲したパイ共役面の自己集合に立脚した蛍光材料の開発を目的とする。ホスト-ゲスト化学において、パイ共役系分子は疎水環境を提供するほか、ホスト-ゲスト間でのパイ-パイやCH-パイ相互作用を通じてゲスト分子を強く捕捉する。さらに環内に非局在化するパイ電子に由来した特異な光学特性を有し、その性質は共役系を拡張することでより一層興味深さを増すことが知られている。この特性を活かし、従来のホスト分子は主に平面的な芳香族分子で構成されてきた。一方で、湾曲したパイ共役分子を基盤としたホスト分子は、特異な分光学的な特性と幅広い分子内包能を同時に発現可能であるにも関わらず、その報告例は限定的であった。そこで研究代表者は、湾曲したパイ共役系分子を合成し、その自己集合と分子内包で発現する特異的な分光特性を明らかにすることを目的とした。本年度は、①アントラセン環を柔軟なジインで連結したボウル状構造体の合成、②湾曲したパネル分子から構築された金属架橋ケージの合成に関して取り組んだ。具体的な成果としては、①に関して、鍵中間体となるアントラセン環に3つのアセチレンユニットを導入した分子を合成し、その類縁体で後続の薗頭カップリングの反応条件の検討を行った。②に関して、湾曲した反芳香族分子から構築された金属架橋ケージの構築とその基礎物性および内包された有機分子の異常なNMRケミカルシフトを報告した(Nature誌に報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、研究課題として計画していた鍵前駆体であるアントラセンの2,7,9位に3つのアセチレンを有する分子の合成を達成し、続く反応条件の検討を類縁体を用いて実施した。また当初の計画にはなかった、反芳香族性を有する湾曲可能なポルフィリノイドへ化学修飾を施し、その配位結合を駆動とした自己集合で構築されたM4L6型の分子ケージの構築に成功した。詳細な構造解析の結果、それぞれのパネル分子は内側に凸の状態で湾曲していることが判明した。さらに、単純な分子内包に留まらず、内包された分子の異常なNMRをケミカルシフトを世界で初めて実証することにも成功し、当該成果を論文として発表するに至った。以上のことから、当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度合成したアントラセン鍵中間体を用いた湾曲したボウル状分子の合成を行い、その自己集合と分子内包を契機とする蛍光性評価を行う。また、本年度に得られた湾曲した反芳香族ケージの知見を生かして、機能性ゲスト分子の包接による特異的な物性の発現を目指す。
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