2019 Fiscal Year Research-status Report
神経系ガングリオシドが持つ生物学的機能の分子基盤の解明
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19K23627
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
河村 奈緒子 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 特任助教 (80849711)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ガングリオシド / 脂質ラフト / シアル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、神経細胞上に存在するシアル酸含有糖脂質(ガングリオシド)の一群であるc系列ガングリオシドを標的とし、その化学合成法の開発、さらに分子プローブを利用した機能解明を目的としている。初年度である本年度は、当初の研究計画に基づいて、c系列ガングリオシドの糖鎖部分の化学合成に注力し、以下の成果を得た。 1.二環性シアル酸ユニットの開発 c系列ガングリオシドの化学合成及びその分子プローブの開発はこれまで極めて困難とされてきた。その要因は、糖鎖に含まれるα(2,8)結合のシアル酸三量体の化学合成が極めて難しいことによる。本研究課題では、この課題の克服を目指し、新たなシアル酸三量体合成法を考案した。最近独自に開発したシアル酸の完全なα選択的グリコシド化法を基盤とし、α(2,8)結合合成用の新たな二環性シアル酸ユニットを二種類考案した。考案した候補の反応性の比較から、α(2,8)結合合成のための優れた二環性シアル酸ユニットを見出した。 2. シアル酸三量体の合成 上記の成果に基づいて、α(2,8)結合のシアル酸三量体の合成に取り組んだ。ガラクトースユニットを起点とし、二環性シアル酸ユニットを三度結合させる手法を試みた。その結果、三量体を高収率にて与える条件を見出し、新たな知見も得た。これにより、シアル酸三量体の合成に成功し、本研究課題で考案した合成法が有用であることを確認した。c系列ガングリオシドの合成達成に向け、さらに研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行にあたって最も困難と予想されたシアル酸三量体の合成に成功したため、合成上の課題を解決することができたと考えている。当初計画していたガングリオシド構造の合成までにはあと少しの工程が残されているため、次年度に完了させる予定である。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立したシアル酸三量体合成法を基盤に、c系列ガングリオシド及びその分子プローブの合成を遂行する。合成完了後は当初の研究計画に従い、細胞上での1分子イメージング、光架橋反応による親和性タンパク質の同定を実施する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験計画に若干の変更の必要性が生じ、当該年度に予定していた蛍光色素(40万円)の購入費用を、次年度の消耗品費に充当させる。研究成果は順調に得られているため、研究計画や予算計画の大幅な変更は必要ないと考えている。
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