2019 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞特異的なWFDC2結合タンパク質の同定と機能解析
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19K23632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武居 俊樹 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (00844771)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | WFDC2 / HE4 / タンパク質合成 / 癌細胞 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、広義の癌細胞において発現量が亢進しているWFDC2と結合する未知の結合タンパク質を単離・同定することで、病態との因果関係を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、アフィニティタグを部位特異的に導入したWFDC2を化学合成法により調製した後、癌細胞に存在する結合タンパク質をタンパク質間相互作用によって単離し、プロテオミクス解析を用いて同定する。また、得られた結合タンパク質を種々の生化学的手法により解析し、得られた情報を元にアンタゴニストの創出を目指す。 そこで本年度では、まず結合タンパク質探索に必要な部位特異的化学修飾を有するWFDC2の化学合成を試みた。その結果、ペプチド固相合成法によるペプチドセグメントの調製と、続くNCL法による縮合とフォールディングを経て、N末端にビオチンおよびローダミンを部位特異的に導入したWFDC2を得ることに成功した。次に、ローダミンを導入したWFDC2を癌細胞株に添加することで局在調査を行った。ローダミンの蛍光を蛍光顕微鏡で観察した結果、有意な細胞局在は観測されなかったが、細胞内および細胞表面にローダミンの蛍光が見られた。さらに、ビオチンを導入したWFDC2を用いて癌細胞に存在する結合タンパク質の単離をパイロットスケールで試みたところ、コントロールと比較して異なるタンパク質が特異的に単離されたことがSDS-PAGEによる分析で示唆された。 今後は、様々な種類の癌細胞株に対して結合タンパク質の単離検討を行うとともに、プロテオミクス解析によって結合タンパク質の同定を進める。さらに、結合タンパク質を標的とした種々の生化学的実験を行い、詳細な解析とアンタゴニスト創出に向けて研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、結合タンパク質の単離・同定に必要なビオチン修飾を有するWFDC2の化学合成を試み、NCLおよびフォールディングを行った。WFDC2は8対のSS結合を有しているため、合成が困難であると想定されたが、グルタチオンを用いた酸化還元条件にて優位にフォールディングされたWFDC2を得ることに成功した。また、別途合成したローダミン修飾を有するWFDC2を合成することにも成功し、結合タンパク質の細胞局在を調査した。その結果、局在を明らかにすることは出来なかったものの、ビオチン修飾を有するWFDC2を癌細胞抽出液に添加することで、結合タンパク質の候補として可能性のあるいくつかのタンパク質をSDS-PAGEにより検出することに成功している。 以上のように、癌細胞における結合タンパク質の細胞局在を明らかにすることは出来なかったものの、当初想定していた本年度の計画はほぼ達成されたことから、ほぼ計画通りに進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ビオチン修飾を有するWFDC2を大量に調製し、様々な癌細胞株から結合タンパク質の単離・同定を試みるとともに、必要に応じて組織からの単離も検討する。結合タンパク質の同定が叶えば、種々の生化学的手法を駆使することで病態との因果関係を調査するとともに、アンタゴニスト創出に向けて検討を進める予定である。
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