2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of new microscopy enabling the high-resolution observation of hydrogen on metal surfaces
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19K23640
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
櫻井 敦教 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (90769770)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 表面水素 / 近接場光 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属表面の水素は、触媒反応、電極反応、水素吸蔵などの多くの現象において重要な役割を果たしており、その反応機構の詳細を理解するには、吸着水素の局所構造を直接観測できることが理想的である。しかし従来の遠視野による観測では、空間分解能が光の波長程度に制限されてしまう。そこで本研究では、近接場光を利用して、金属表面に吸着した水素を高感度かつ高空間分解能で検出可能にする新規顕微分光法の開発を目的とする。 今年度は、新規に導入した極低温超高真空チャンバーの立ち上げを行い、液体ヘリウム温度で装置を動作させることに成功した。また真空チャンバーの外部から内部へレーザーを入射させ、その反射光を外部に取り出し、分光器で計測する光学系を新たに組み立てた。これによって、チャンバー内に設置したモデル系からの信号を遠視野で測定することにも成功している。 さらに近接場を効果的に生じさせるための金属構造の作成にも取り組んだ。作成した金属構造はすべて走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、その形状を確認している。これまで複数の金属構造の作成を行い、理想的な形状を持つ金属構造の作成条件を洗い出している。この金属構造は、今後高感度の顕微分光法を実現するために必須のものである。 これらの基礎的な技術と経験の積み重ねが、今後近接場光を利用した金属表面水素の直接観測のための重要な要素技術になっていくものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度導入した極低温超高真空チャンバーは、当初液体ヘリウムのリークの問題があり、なかなか装置を極低温まで下げることができなかった。しかし地道に装置の改良を重ねることで、年度中に液体ヘリウム温度での動作を成功させることができた。また真空チャンバーにレーザーを入射させる光学系を新たに構築して、遠視野で信号を観測できるようにするとともに、理想的な形状を持つ金属構造の作成にも成功している。 以上のことを総じて判断すれば、当初の想定通りの着実な研究の進展があったものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した金属構造を真空チャンバー内に取り付け、そこにレーザーを入射させることで、近接場光を利用した顕微分光法の実現に今後取り組んでいく。また金属表面に吸着した水素を検出するためには、金属の清浄表面を作り出さなくてはいけない。今年度は装置の立ち上げと構築に注力してきたが、今後はサンプルの準備に軸足を移し、金属表面水素の高感度・高分解能顕微分光法の実現に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
金属構造に生じる近接場光のシミュレーションを行うためのワークステーションを当初購入する予定であったが、新型コロナの影響でワークステーションの構築に必要なメモリの納入が遅れたので、新年度に購入を先送りしたため。
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