2020 Fiscal Year Annual Research Report
空間的かつ時間的に秩序を有する無機ナノシートの集合構造
Project/Area Number |
19K23642
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐野 航季 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20845763)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 無機ナノシート / 磁場配向 / ソフトマテリアル / 時空間パターン / 非平衡 / 自己組織化 / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内では、たんぱく質などの動的ナノユニットが3次元秩序構造へと自己集合して協働することで、個々の小さくて単純な動きが巨視的で精緻な動きへと繋がっている。最近、水に分散した数十億枚もの無機ナノシートの集合構造に対して、特定の条件下で化学的刺激を与えると、これらのナノシートが協働的に運動する結果、空間的かつ時間的に秩序を有する巨視的な波が発生することを見出した。本研究の目的は、この伝播波の基礎的理解とその自在制御のための要素を探索することである。 最終年度はナノシート伝播波の動的性質に重点を置き、(1)波の伝播速度の制御と(2)物質輸送機能への応用を目指した。(1)前年度の成果によって、系中の化学物質の拡散に伴って波の伝播が引き起こされていることが示唆された。そこで、系に加える化学物質の濃度を変えたところ、波の伝播速度を制御できることを見出した。(2)繊毛は集団的に運動することによって伝播波を生み出し、物質を輸送することができる。この動的システムに触発され、応用展開として無機ナノシートの伝播波による物質輸送機能の開拓を行った。具体的には、蛍光ラベルされた10 um程度のマイクロ粒子を本系に加えて、その経時変化を共焦点レーザー走査型顕微鏡によって観察した。その結果、ナノシートの波と同じ方向に波と同じ速度で運搬されることが明らかになった。粒子の大きさを変えても同様の結果だったことから、これは波によるアクティブな輸送と考えられる。 研究期間全体を通して、ナノシートの伝播波の構造解析、発生メカニズムの解明、そして、物質輸送機能への展開を行うことに成功した。本研究で得られた成果は、ナノサイズのビルディングブロックを精緻な構造へと組み上げ、巨視的な動的機能をデザインするための設計指針となることが期待される。
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Research Products
(6 results)