2019 Fiscal Year Research-status Report
多孔性金属錯体に吸着されたアンモニア分子の反応性の理解と制御
Project/Area Number |
19K23648
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
荻原 直希 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (70848267)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 金属ナノ粒子 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
多孔性金属錯体(MOF)は金属イオンと架橋配位子からなる多孔性材料であり、高い分子吸着能を有することが知られる。MOFの特徴としては、金属イオンと架橋配位子の選択・配置の多様性による細孔環境の設計性の高さが挙げられる。この高い設計性を生かして、MOFのナノ細孔のサイズ・化学環境を系統的に変化させることで、分子の吸着挙動、さらにはMOFに吸着されたゲスト分子の性質を精密に制御することができる。そのため、MOF細孔中に存在するゲスト分子の物性研究は盛んであり、MOF中のゲスト分子はバルク状態では実現できない物理的・化学的性質を有することが知られている。しかし、この特異な性質を有するMOF中のゲスト分子自体の化学反応性に関する知見は未だ乏しい。そこで本研究では、MOF中のゲスト分子の化学反応性を調べることを目的とした。 この目的の実現のため、MOFと金属ナノ粒子を複合化するというアプローチを用いた。この複合体において、MOFは反応原料となるゲスト分子を提供し、金属ナノ粒子は反応触媒としての役割を果たす。複合体合成は、金属ナノ粒子存在下でMOF前駆体を反応させ、金属ナノ粒子表面にMOFを被覆することにより行った。 まずゲスト分子として、水分子に着目し、水の活性化が律速となる水性ガスシフト反応をMOF複合体に適用した。これにより、MOF中の水の反応性の理解を試みた。その結果、MOF複合体は既存の担持金属触媒を凌駕する反応性を示した。このように、MOF中の水分子はバルク水より高い反応性を有することを見出した。さらに、MOFを構成する配位子を系統的に変化させて複合体を合成し反応活性を評価したところ、配位子の種類に依存した反応性を有することがわかった。このようにMOFが持つ高い設計性を生かし、細孔の化学環境を合理的にデザインすれば、水分子の化学反応性を系統的に制御可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度はMOFと金属ナノ粒子の複合化により、MOFに吸着されたゲスト分子の反応性を「理解」すること、次年度は反応性を「制御」することを計画していた。 しかし実際のところは、予定よりも研究の進捗が早まり、初年度のうちに、ゲスト分子の反応性の「理解」および「制御」の両方の目標を達成することができた。 以上のことから、当初の計画以上の結果が見込めると考え、計画以上に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、MOFに吸着されたゲスト分子として水分子に着目し、研究を展開してきた。次年度以降は、ゲスト分子として、水分子に加え、アンモニア分子や二酸化炭素分子、さらには、よりサイズの大きな有機分子に着目し、その反応性の理解および制御を進めて行く予定である。これにより、小分子活性の場としてのMOFという学理の発展を目指していく。 また、MOFだけでなく他の多孔性材料に着目し、その吸着分子の反応性の理解と制御も試みたいと考えている。具体的には多孔性材料として、有機ケージや多孔性イオン結晶を用いて、これと金属ナノ粒子を複合化させることにより、そのゲスト分子の化学反応性の理解と制御を目指していきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)